公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務は、業務妨害罪にいう「業務」に当たる。
公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務と業務妨害罪にいう「業務」
刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)233条,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)234条
判旨
公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務は、強制力を行使する権力的公務に当たらないため、刑法上の業務妨害罪における「業務」に含まれる。
問題の所在(論点)
公務員が執行する事務のうち、公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務が、刑法233条および234条の「業務」に該当するか。
規範
刑法233条および234条にいう「業務」には、公務であっても、強制力を行使する権力的公務を除き、それ以外の事務(非権力的公務)は含まれると解する。
重要事実
被告人は、公職選挙法に基づき選挙長が行う立候補届出受理事務を妨害したとして、業務妨害罪(改正前刑法233条、234条)に問われた。当該事務が、同罪の保護法益である「業務」に該当するかが争点となった。
あてはめ
事件番号: 平成10(あ)1491 / 裁判年月日: 平成14年9月30日 / 結論: 棄却
1 東京都が都道である通路に動く歩道を設置するため,通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得して退去させた後,通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事は,自主的に退去しなかった路上生活者が警察官によって排除,連行された後,その意思に反して段ボール小屋を撤去した場合であっ…
本件で妨害の対象となった選挙長の立候補届出受理事務は、届出書等の形式的審査や受領を内容とする事務である。この事務は、相手方の意思に反して強制力を行使する権力的公務とは認められない。したがって、強制力を行使しない非権力的公務として、業務妨害罪における「業務」の概念に包含されると評価できる。
結論
選挙長の立候補届出受理事務は、刑法233条、234条にいう「業務」に当たる。
実務上の射程
公務と業務妨害罪の成否に関する重要判例である。答案上は、公務執行妨害罪(145条)との棲み分けとして「強制力を行使する権力的公務」か否かを基準とし、本判例を非権力的公務の具体例(選挙事務等)として引用する。なお、強制力のある公務であっても業務妨害罪が成立するかという論点(肯定説・否定説)の文脈で、否定説(判例の立場)の根拠として用いる。
事件番号: 昭和59(あ)627 / 裁判年月日: 昭和62年3月12日 / 結論: 棄却
県議会委員会の条例案採決等の事務は、威力業務妨害罪にいう[業務]に当たる。
事件番号: 昭和43(あ)1684 / 裁判年月日: 昭和45年7月21日 / 結論: 棄却
公共企業体等労働関係法一七条一項に違反してなされた争議行為についても、労働組合法一条二項の適用がある。