1 東京都が都道である通路に動く歩道を設置するため,通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得して退去させた後,通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事は,自主的に退去しなかった路上生活者が警察官によって排除,連行された後,その意思に反して段ボール小屋を撤去した場合であっても,威力業務妨害罪にいう「業務」に当たる。 2 東京都が都道である通路に動く歩道を設置するため,通路上に起居する路上生活者に対して自主的に退去するよう説得して退去させた後,通路上に残された段ボール小屋等を撤去することなどを内容とする環境整備工事は,自主的に退去しなかった路上生活者が警察官によって排除,連行された後,その意思に反して段ボール小屋を撤去するに及んだものであっても,同工事が公共目的に基づくものであるのに対し,路上生活者は通路を不法に占拠していた者であり,行政代執行の手続を採ってもその実効性が期し難かったことなど判示の事実関係の下では,威力業務妨害罪としての要保護性を失わせるような法的瑕疵を有しない。
1 東京都による動く歩道の設置に伴う環境整備工事が威力業務妨害罪にいう「業務」に当たるとされた事例 2 東京都による動く歩道の設置に伴う環境整備工事に威力業務妨害罪としての要保護性が肯定された事例
刑法234条
判旨
強制力を行使する権力的公務でない「環境整備工事」は刑法上の業務に当たり、適法な手続を欠いたとしても、やむを得ない事情があれば業務妨害罪による保護に値する。
問題の所在(論点)
1. 本件環境整備工事(路上生活者の意思に反する小屋の撤去を含む)が、刑法234条の「業務」に該当するか。 2. 行政代執行の手続を経ずに行われた工事が、威力業務妨害罪による保護に値するか(要保護性)。
規範
1. 公務員の職務のうち、強制力を行使する権力的公務でないものは、刑法234条の「業務」に含まれる。 2. 業務妨害罪により保護される「業務」であるためには、当該業務が法的保護に値するものであることを要する。手続的瑕疵がある場合でも、行政上の目的、代替手段の有無、相手方の不利益、事前配慮等を総合考慮し、やむを得ない事情に基づくときは、業務としての要保護性を失わない。
事件番号: 平成20(あ)1132 / 裁判年月日: 平成23年7月7日 / 結論: 棄却
卒業式の開式直前に,式典会場である体育館において,主催者に無断で,保護者らに対して,国歌斉唱のときには着席してほしいなどと大声で呼び掛けを行い,これを制止した教頭らに対して怒号するなどし,その場を喧噪状態に陥れるなどして,卒業式の円滑な遂行に支障を生じさせた行為をもって,刑法234条の罪に問うことは,憲法21条1項に違…
重要事実
東京都は新宿駅西口通路に「動く歩道」を設置するため、不法占拠状態にあった路上生活者の段ボール小屋等を撤去する環境整備工事を計画した。都は事前に臨時保護施設を設け、自発的退去を促す周知活動を行った。工事当日、被告人らはバリケードを築き、都職員らに対し鶏卵や花火を投げ付け、消火器を噴射するなどして工事を阻止した。警察官が座り込み者を排除した後、都職員は代執行の手続を経ることなく残された小屋等を撤去した。
あてはめ
1. 本件工事は、自発的退去の説得や残置物の撤去を内容とするものであり、強制力を行使する権力的公務ではない。警察による排除後に結果として意思に反する撤去が行われたとしても、その性質は変わらず「業務」に当たる。 2. 要保護性について、本件工事は公共目的(歩道設置)に基づき、路上生活者は不法占拠者である。都は事前に宿泊施設等の行政対策を講じ、周知活動により不意打ち防止の配慮もしていた。また、対象者が流動的で特定が困難な本件では、行政代執行の手続を採ることは実効性を期し難い。したがって、代執行手続を欠く撤去もやむを得ない事情に基づき、法的瑕疵があるとは認められない。
結論
本件工事は威力業務妨害罪により保護されるべき「業務」に該当し、被告人らには同罪が成立する。
実務上の射程
権力的公務の限定解釈を確認しつつ、公務が「業務」とされる場合の違法性の判断枠組みを示した。行政代執行法上の手続を履践していない公務であっても、代替手段の困難性や相手方への配慮等の事情があれば、直ちに要保護性が否定されるわけではないという実務上の柔軟な判断基準を提供している。
事件番号: 平成9(あ)324 / 裁判年月日: 平成12年2月17日 / 結論: 棄却
公職選挙法上の選挙長の立候補届出受理事務は、業務妨害罪にいう「業務」に当たる。