商標の付された電子部品がいわゆるパチスロ機の構成部分である主基板に装着された場合において、右商標はパチスロ機の外観上は視認できないが、パチスロ機の流通過程において、元の外観及び形態を保っている右電子部品とともに、中間の販売業者やパチンコ店関係者に視認される可能性があったなど判示の事実関係の下では、右商標は、右電子部品が主基板に装着されてパチスロ機に取り付けられた後であっても、なお電子部品についての商品識別機能を保持しており、右商標の付された電子部品をパチスロ機の主基板に取り付けて販売する目的で所持し、又は右パチスロ機を譲渡する各行為について、商標権侵害罪が成立する。
完成品に組み込まれた部品の商標について商標権侵害罪が成立するとされた事例
商標法(平成3年法律第65号による改正前のもの)37条2号,商標法(平成5年法律第26号による改正前のもの)78条
判旨
他人の登録商標が不正に付された電子部品を製品の内部基板に装着した場合であっても、流通過程において当該商標が視認可能であり、商品の識別機能を保持している限り、商標権侵害罪が成立する。
問題の所在(論点)
商標が付された部品(CPU)が製品(パチスロ機)の内部に組み込まれ、完成品の外観からは商標が直接見えなくなった場合において、なお商標権侵害罪における商標の「使用」があったといえるか。特に、部品としての「商品識別機能」が維持されているかが問題となる。
規範
商標を付した部品を他の製品に組み込んだ場合であっても、当該商標が依然としてその部品自体の出所を表示し、他商品と区別する「商品識別機能」を保持していると認められる場合には、商標法上の「使用」にあたり、商標権侵害罪(商標法78条)を構成する。
重要事実
パチスロ機製造会社の代表者である被告人は、他人が無断で「SHARP」の登録商標を付したCPU(本件CPU)を、その情を知りながら入手した。被告人は、本件CPUをパチスロ機の主基板に半田付けし、透明または半透明のケースで覆った状態で、販売目的で所持・譲渡した。本件CPUは基板装着後も外観を保ち、ケース越しに商標を視認できた。パチスロ機完成後の外観からは商標は見えないが、流通段階や修理・交換時には中間業者やパチンコ店関係者が視認できる状態にあった。
あてはめ
本件CPUに付された商標は、主基板に装着され、さらにパチスロ機本体に組み込まれた後であっても、元の外観・形態を維持しており、透明ケース越しに視認可能であった。パチスロ機の配送時やパチンコ店での設置・補修の場面において、中間業者や顧客であるパチンコ店関係者が当該商標を視認する可能性が認められる。したがって、本件商標は、パチスロ機の一部となった後も、依然として本件CPUという個別の商品についての識別機能を保持していたと評価できる。
結論
被告人の行為は、商標の識別機能を害するものであり、商標権侵害罪が成立する。
実務上の射程
部品そのものの出所表示機能が維持されているかを重視する判断である。製品内部に隠匿されて外部から一切認識できない場合(識別機能の喪失)を除き、流通過程やメンテナンス時に視認可能であれば射程が及ぶ。侵害主体が「部品」単位で商標を認識し利用している場合に適用すべき規範である。
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