関税法(平成六年法律第一一八号による改正前のもの)一〇九条の規定は、わいせつ表現物の単なる所持を目的とした輸入を処罰する場合においても、憲法一三条、三一条に違反しない。
関税法(平成六年法律第一一八号による改正前のもの)一〇九条の規定と憲法一三条、三一条
憲法13条,憲法31条,関税法(平成6年法律118号による改正前のもの)109条1項,関税法(平成6年法律118号による改正前のもの)109条2項,関税定率法(平成6年法律118号による改正前のもの)21条1項3号
判旨
関税法109条に基づき、個人的鑑賞目的のわいせつ表現物の輸入を一律に処罰することは、健全な性的風俗を実効的に防止する水際阻止の必要性と合理性が認められるため、憲法13条、31条に違反しない。
問題の所在(論点)
個人的鑑賞を目的とするわいせつ表現物の輸入行為を、関税法109条に基づき一律に処罰の対象とすることが、個人の自律的な道徳領域への不当な介入として憲法13条、31条に違反しないか。
規範
行政上の規制に必要性と合理性が認められる場合、その実効性を確保するために、規制違反に対して輸入目的のいかんを問わず一律に刑罰を科すことは、憲法13条、31条に違反しない。わいせつ表現物の流入阻止については、輸入目的の識別が困難であり、流入後の拡散も容易であることから、水際で一律に阻止することに必要性と合理性が認められる。
重要事実
被告人は、個人的鑑賞を目的として、性交類似行為等が露骨に撮影されたビデオテープや雑誌等の「わいせつ表現物」を、米国から日本へ隠匿して持ち込み、または持ち込もうとした。第一審は関税法109条違反(輸入及び未遂)で有罪としたが、原審は、個人的鑑賞目的の輸入を処罰することは憲法13条・31条に抵触するとして、同条を限定解釈し無罪を言い渡した。
あてはめ
わいせつ表現物は、輸入目的の識別が困難である上、一度流入すれば頒布・販売の過程に置かれることが容易である。したがって、国内の健全な性的風俗を実効的に保護するためには、目的を問わず「水際」で流入を阻止することが不可欠であり、規制には高い必要性と合理性がある。この行政規制の実効性確保のために罰則を設けることは、たとえ個人的鑑賞目的であっても、公共の福祉による合理的な制限として正当化される。
結論
関税法109条により、個人的鑑賞目的のわいせつ表現物輸入を一律に処罰することは合憲である。したがって、被告人の行為は同条に該当し、限定解釈により無罪とした原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
個人のプライバシーや内面的自由が関わる領域であっても、外部への流出・拡散の危険性が高く、水際での一律規制に合理性がある場合には、目的による限定解釈をせず処罰を肯定する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和53(あ)157 / 裁判年月日: 昭和54年5月10日 / 結論: 棄却
許可を受けないで覚せい剤を輸入した者に対し関税法一一一条の罪の成立を認めても、憲法三八条一項にいう「自己に不利益な供述」を強要したことにはならない。
事件番号: 平成18(あ)1249 / 裁判年月日: 平成20年3月4日 / 結論: 棄却
児童ポルノを日本国内で運営されているインターネット・オークションに出品して不特定の者から入札を募り,外国から日本に居る落札者にあてて児童ポルノを郵便に付して送付した場合,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条6項,4項所定の児童ポルノを不特定の者に提供する目的で外国から輸出したものといえ…