児童ポルノを日本国内で運営されているインターネット・オークションに出品して不特定の者から入札を募り,外国から日本に居る落札者にあてて児童ポルノを郵便に付して送付した場合,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条6項,4項所定の児童ポルノを不特定の者に提供する目的で外国から輸出したものといえる。
児童ポルノをインターネット・オークションの落札者にあてて外国から郵送した行為が,「不特定の者に提供する目的で」外国から輸出したものといえるとされた事例
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条4項,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条6項
判旨
児童買春・児童ポルノ禁止法7条6項の児童ポルノ輸出罪(販売目的)の成否につき、インターネット・オークションを利用して不特定の者から入札を募り、落札者へ送付する行為は「不特定又は多数の者に販売する目的」を充足する。
問題の所在(論点)
児童ポルノを特定の落札者に対して送付する行為が、児童買春・児童ポルノ禁止法7条6項に規定される「不特定又は多数の者に販売する目的」による輸出に該当するか。
規範
児童ポルノを外国から輸出する行為が、同法7条6項(同条4項参照)にいう「不特定若しくは多数の者に販売する目的」を充足するか否かは、単に送付時点の相手方が特定されているか否かではなく、買受人の募集・決定から送付に至る一連の行為の客観的性質に基づき判断される。インターネット・オークションのように不特定の者から入札を募り、自動的に決定された落札者に対して送付する態様は、当該目的を充足するものと解するのが相当である。
重要事実
タイ王国に居住する被告人は、児童ポルノDVDの電磁的記録を空のDVDに複製したものを、日本国内で運営されているインターネット・オークションに出品した。入札期間終了後の最高値入札者が自動的に落札者となる仕組みにおいて、被告人は落札者からの入金を確認後、当該DVDを作成・梱包し、タイの郵便局から日本の落札者住所宛てに国際スピード郵便で計6回送付した。これらDVDは航空機により成田国際空港へ運ばれ、日本国内に到着した。
事件番号: 平成20(あ)865 / 裁判年月日: 平成20年11月4日 / 結論: 棄却
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あてはめ
被告人の行為は、送付時点では特定の落札者を宛先としている。しかし、本件輸出行為は、(1)インターネット・オークションにより不特定の者から入札を募るプロセス、(2)最高値入札者を自動的に落札者として決定するプロセス、(3)その落札者へ送付するプロセスという、一連の販売行為の一部を構成している。したがって、最終的な送付先が一名であっても、その実態は不特定の者に販売する目的の一環であると評価される。よって、本件被告人には「不特定の者に提供する目的」が認められる。
結論
被告人は、不特定の者に販売する目的で児童ポルノを外国から輸出したものと認められ、同法7条6項の罪が成立する。
実務上の射程
特定の個人に送付する形式であっても、その前段階の公募プロセスを含めて「不特定・多数」への販売目的を認定できることを示した判例である。インターネット取引において『特定人への譲渡』を強弁する弁護側の主張を封じる際の判断枠組みとして活用できる。刑法における『公然』や『不特定』の解釈とも親和性がある。
事件番号: 平成12(あ)1769 / 裁判年月日: 平成14年6月17日 / 結論: 棄却
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1 児童ポルノを,不特定又は多数の者に提供するとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条4項の児童ポルノ提供罪と同条5項の同提供目的所持罪とは併合罪の関係にある。 2 児童ポルノであり,かつ,刑法175条のわいせつ物である物を,不特定…
事件番号: 平成21(あ)2082 / 裁判年月日: 平成24年7月9日
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