1 児童ポルノを,不特定又は多数の者に提供するとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条4項の児童ポルノ提供罪と同条5項の同提供目的所持罪とは併合罪の関係にある。 2 児童ポルノであり,かつ,刑法175条のわいせつ物である物を,不特定又は多数の者に販売して提供するとともに,不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した場合,わいせつ物販売と児童ポルノ提供,わいせつ物販売目的所持と児童ポルノ提供目的所持はそれぞれ観念的競合の関係に立つから,わいせつ物販売と同販売目的所持が包括して一罪を構成すると認められるときには,全体が一罪となる。
1 児童ポルノを,不特定又は多数の者に提供するとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合の罪数 2 児童ポルノであり,かつ,刑法175条のわいせつ物である物を,不特定又は多数の者に販売して提供するとともに,不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した行為が,全体として一罪とされた事例
(1,2につき)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条4項,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条5項 (1につき)刑法45条 (2につき)刑法54条1項,刑法175条
判旨
わいせつ図画販売の目的でわいせつ物と非わいせつ物を混在して所持した場合であっても、その所持が一体の目的(不特定多数への販売目的)に基づくものである以上、当該所持行為はわいせつ物頒布等罪(刑法175条)における「販売の目的をもって所持した」ものと認められ、同罪が成立する。
問題の所在(論点)
刑法175条(わいせつ物頒布等罪)の「販売の目的をもって、所持」したといえるか。特に、販売対象となる物品の大部分が非わいせつ物であり、その一部にのみわいせつ物が含まれている場合に、当該わいせつ物について販売目的の所持が認められるかが問題となる。
規範
刑法175条前段の「販売の目的をもって、所持し」たといえるためには、所持の対象となる物品の一部にわいせつ物が含まれており、かつ、その物品全体を販売する目的があれば足りる。販売対象となる物品群が、わいせつ物とそれ以外の物品(非わいせつ物)の混在した集合体(例:いわゆるアイドルのポラロイド写真等のセット)であったとしても、その全体を不特定多数に販売する主観的意図をもって占有している以上、客観的に含まれるわいせつ物について「販売目的の所持」を肯定することができる。
事件番号: 平成17(あ)1342 / 裁判年月日: 平成18年2月20日 / 結論: 棄却
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為は,同法7条3項の児童ポルノ製造罪に当たる。
重要事実
被告人は、いわゆる「アイドルのポラロイド写真」と称する写真セットを大量に所持していた。この写真セットは合計1101枚から構成されていたが、そのうち「わいせつな図画」に該当するものは23枚であった。被告人は、これら1101枚の写真の全体を、不特定多数の者に販売する目的で所持していた。原審は、このうち23枚のわいせつ図画について、販売目的での所持を認定した。
あてはめ
被告人が所持していた1101枚の写真セットは、その全体が不特定多数の客に販売されることを予定していたものである。このセットの中には、客観的にわいせつ図画と認められる23枚が含まれていた。被告人は、これらを含む写真セット全体を販売しようとする一連の目的を有しており、その目的の中に当然に当該わいせつ図画23枚の販売も含まれているといえる。したがって、たとえ非わいせつ物との混在状態であっても、当該わいせつ図画について販売の目的をもって所持したとの要件を充足する。判決文によれば、被告人がこれらを一体として販売しようとした事実に照らせば、わいせつ物頒布等罪の成立を妨げるものではないと解される。
結論
被告人が販売目的で所持していた写真セットの一部にわいせつ図画が含まれていた以上、当該わいせつ図画について刑法175条のわいせつ図画販売目的所持罪が成立する。これと同旨の原判断は相当である。
実務上の射程
本判決は、大量の物品の中に少数のわいせつ物が混入している場合の販売目的所持の成否を示したものである。実務上、セット商品や袋詰めされた商品の中にわいせつ物が含まれている場合、販売者がその中身(わいせつ物)を認識しつつ、全体を販売する意図があれば、個別的な販売価格の割り当てがなくとも同罪が成立することを確認する意義がある。
事件番号: 平成12(あ)1769 / 裁判年月日: 平成14年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】児童買春・児童ポルノ禁止法2条3項各号に規定される「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件は、一般人の通常人が具体的場合に判断可能な基準であり、明確性の原則(憲法31条)等に反しない。 第1 事案の概要:被告人は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(児童ポルノ禁…
事件番号: 平成15(あ)1348 / 裁判年月日: 平成18年5月16日 / 結論: 棄却
児童の姿態に係る画像データを記憶,蔵置させて児童ポルノ・わいせつ物である光磁気ディスクを製造し,これを所持する行為は,販売用コンパクトディスク作成に備えてのバックアップのためのものである場合には,コンパクトディスク作成の際に児童の目の部分にぼかしを入れるなどの加工を施す意思であっても,児童買春,児童ポルノに係る行為等の…
事件番号: 昭和58(あ)1546 / 裁判年月日: 昭和59年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法175条のわいせつ物頒布等の規定は、憲法13条、21条、31条に違反せず、また、他人の権利侵害や未成年者への配慮を欠く場合に限定して解釈しなくとも合憲である。 第1 事案の概要:被告人が刑法175条の罪に問われた事案において、被告人および弁護人は、同条が個人の幸福追求権(憲法13条)や表現の自…