原判決の違法が、現実に存在しない未決勾留日数を裁量により本刑に算入した点のみにある場合においては、原判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例 (反対意見がある)
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項
判旨
現実に存在しない未決勾留日数を本刑に算入することは刑法21条に違反し、原判決の未決勾留算入部分に誤りがある場合には、その部分のみを破棄して自判することができる。
問題の所在(論点)
現実に存在しない未決勾留日数を本刑に算入することの適法性、および当該違法がある場合に判決の一部(未決勾留算入部分)のみを破棄することができるか。
規範
刑法21条に基づき、未決勾留日数を本刑に算入するにあたっては、現実に存在する日数の範囲内で行わなければならない。現実に存在しない日数を算入することは同条の適用を誤る違法な判断となる。また、未決勾留日数の算入に関する誤りは、判決の他の部分(本刑の量刑等)と可分なものとして、その算入部分のみを破棄の対象とすることが許容される。
重要事実
被告人は窃盗罪等で起訴され、第一審で懲役1年2月の判決を受けた。被告人は控訴したが、控訴審(原審)は控訴棄却の判決を言い渡す際、「当審における未決勾留日数中100日を本刑に算入する」とした。しかし、原審における実際の未決勾留日数は、控訴申立の日(昭和55年12月25日)から原判決言渡日の前日(昭和56年3月26日)までの92日間であった。
あてはめ
原審における実際の未決勾留日数は92日である。これに対し、原判決がこれを超える100日を本刑に算入したことは、現実に存在しない日数を算入したものであり、刑法21条の適用を誤ったものといえる。この点について検察官の上告論旨には理由があるが、上告趣意は未決勾留算入の点に限定されており、本刑の量刑等に関するその余の部分については特段の不当性が認められないため、当該算入部分のみを破棄すべきである。
結論
原判決中、未決勾留日数を算入した部分を破棄する。現実に存在する92日を本刑に算入し、その余の部分に対する上告を棄却する。
実務上の射程
未決勾留日数の計算ミスという形式的な法令適用の誤りについては、判決全部を破棄せず、算入部分のみを一部破棄・自判することで迅速な訴訟解決を図る実務上の処理を認めたもの。答案上は、判決の可分性と一部破棄の限界を検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和59(あ)189 / 裁判年月日: 昭和59年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を刑法21条により本刑に算入することは違法であり、仮出獄の取消しに伴う残刑執行期間中の勾留日数は算入の対象外となる。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪等で懲役3年に処され、仮出獄中の昭和58年4月に別件窃盗で勾留された。同年5月27日に前科の仮出獄が取り消され、同…