一 刑法二六条の三の規定は、憲法一一条、一三条、三一条に違反しない。 二 刑法二六条の三による刑の執行猶予言渡の取消は、同法二六条、二六条の二による刑の執行猶予言渡取消決定の確定をまたず、これと同時に行うことも許される。 三 甲執行猶予の言渡を刑法二六条の二第二号により取り消すと同時に、乙執行猶予の言渡を同法二六条の三により取り消した場合において、右取消決定に対する即時抗告棄却決定が告知されたときには、甲乙両執行猶予の取消の効果が発生し、特別抗告の係属中に乙執行猶予の期間に相当する期間が経過しても、すでに発生している乙執行猶予の取消の効果に影響しない。
一 刑法二六条の三の規定の合憲性 二 刑法二六条の三による刑の執行猶予言渡の取消を同法二六条、二六条の二による刑の執行猶予言渡の取消と同時に行うことの許否 三 甲執行猶予の言渡を刑法二六条の二第二号により取り消すと同時に乙執行猶予の言渡を同法二六条の三により取り消した場合においてこれに対する即時抗告棄却決定の告知後特別抗告の係属中に乙執行猶予の期間に相当する期間が経過したときと乙執行猶予の取消の効果
刑法26条,刑法26条の2,刑法26条の3,刑法27条,憲法11条,憲法13条,憲法31条,刑訴法424条,刑訴法434条
判旨
刑法26条の3による執行猶予の取消しは、同法26条、26条の2による取消決定の確定を待たず、これと同時に行うことができる。また、即時抗告棄却決定の告知により取消しの効力が発生した後は、特別抗告の係属中に猶予期間が経過してもその効力に影響はない。
問題の所在(論点)
1. 刑法26条の3に基づく執行猶予の取消しを行う際、前提となる他の執行猶予取消決定(26条、26条の2)が確定している必要があるか。 2. 執行猶予取消決定の告知後に猶予期間が経過した場合、取消しの効力に影響を及ぼすか。
規範
刑法26条の3の趣旨は、刑の執行と執行猶予の併存を避ける点にある。そのため、同条にいう「刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ取消シタルトキ」とは、必ずしも取消決定の確定を要せず、26条または26条の2に基づく取消決定と同時に26条の3による取消決定を行うことも許容される。また、取消決定に対する即時抗告棄却決定が被告人に告知され、取消しの効力が発生した以上、その後の上訴中に猶予期間が経過したとしても、既に発生した取消しの効力が消滅することはない。
事件番号: 昭和55(し)83 / 裁判年月日: 昭和55年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予言渡しの取消決定に対する即時抗告棄却決定が、執行猶予期間の経過前に申立人に告知されたときは、その時点で執行猶予取消の効果が発生する。したがって、その後特別抗告の提起期間中に執行猶予期間が経過したとしても、既になされた取消決定等の効力に影響を及ぼすものではない。 第1 事案の概要:申立人…
重要事実
申立人は、京都地裁で執行猶予判決(以下、前刑)を受けた後、大阪地裁でも保護観察付執行猶予判決(以下、後刑)を受けた。その後、大阪地裁は後刑の遵守事項違反を理由に、後刑の執行猶予を刑法26条の2第2号に基づき取り消すと同時に、前刑の執行猶予を刑法26条の3に基づき取り消す決定をした。申立人はこれに対し即時抗告したが棄却され、当該決定が告知された。申立人はさらに特別抗告を申し立てたが、その係属中に前刑の執行猶予期間が経過した。
あてはめ
1. 刑法26条の3は刑の執行と猶予の矛盾を回避する趣旨であるから、後刑の取消しと前刑の取消しを同時に行うことは適法である。確定を待つ必要はないと解される。 2. 本件では、原原審が後刑の取消し(26条の2第2号)と同時に前刑の取消し(26条の3)を行い、これに対する即時抗告を棄却した原決定は、前刑の猶予期間経過前に申立人に告知されている。告知により取消しの効力は発生しており、その後の特別抗告中に期間が経過しても、遡って取消しの効力が失われるものではない。
結論
刑法26条の3による取消しは、他の取消決定と同時に行うことができ、適法に効力が発生した後は猶予期間の経過によってその効力が失われることはない。
実務上の射程
執行猶予の二重取消しに関する実務上の手続を肯定した。答案上は、執行猶予期間満了間際の取消手続において、確定を待たずとも告知により効力が発生し、その後の期間経過が妨げにならない点を利用する。
事件番号: 昭和54(し)29 / 裁判年月日: 昭和54年3月29日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡取消決定に関する特別抗告の係属中に執行猶予期間に相当する期間が経過したことは、すでに発生している執行猶予取消の効果に影響しない。
事件番号: 昭和56(し)113 / 裁判年月日: 昭和56年11月25日 / 結論: その他
一 刑の執行猶予言渡取消決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件において、裁判の執行を停止する場合には、原原決定を対象とすべきである。 二 高裁で言い渡された執行猶予の判決に対する上告申立期間の満了までに五日を残して、被告人の控訴取下により別件につき地裁で言い渡された懲役刑(実刑)の判決の確定したことが地方検察…
事件番号: 昭和56(し)44 / 裁判年月日: 昭和56年4月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予の言渡しを取り消す旨の決定が告知された時点で猶予期間が満了していなければ、その後の特別抗告の係属中に猶予期間が経過したとしても、刑法27条による刑の言渡しの失効は生じない。 第1 事案の概要:被告人に対し執行猶予が付された刑の言渡しがあった。その後、執行猶予の取消事由が生じたため、裁判所は…
事件番号: 昭和56(し)141 / 裁判年月日: 昭和56年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予取消決定に対する即時抗告棄却決定が、猶予期間内に告知された場合、その後に特別抗告期間が経過しても取消しの効果は妨げられない。 第1 事案の概要:申立人は刑の執行猶予の言渡しを受けたが、後にその取消決定がなされた。これに対し申立人は即時抗告を申し立てたが、昭和56年10月12日に即時抗告…