一 警察法二条一項が「交通の取締」を警察の責務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動は、任意手段による限り、一般的に許容されるべきものであるが、それが国民の権利、自由の干渉にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといつて無制限に許されるべきものでないことも同条二項及び警察官職務執行法一条などの趣旨にかんがみ明らかである。 二 警察官が、交通取締の一環として、交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のため、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法である。
一 交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動と警察法二条及び警察官職務執行法一条との関係 二 警察官による交通違反の予防、検挙を目的とする自動車の一せい検問の適法性
警察法2条,警察官職務執行法1条
判旨
交通違反の予防・検挙を目的とする自動車検問は、相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車利用者の自由を不当に制約しない方法・態様である限り、警察法2条1項の責務を遂行するための任意捜査として適法である。
問題の所在(論点)
警察法2条1項の警察の責務を根拠とする、犯罪の嫌疑(不審点)がない状態での一律的な自動車検問が、任意捜査として適法か。特に、警職法2条1項の「不審理由」を欠く場合の検問の可否が問題となる。
規範
警察法2条1項に基づく交通の取締等の警察活動は、強制力を伴わない任意手段による限り一般的に許容されるが、国民の自由への干渉を伴う以上、警察法2条2項や警職法1条の趣旨から無制限ではない。自動車運転者は、公道利用に伴う当然の負担として合理的限度での取締に協力すべき立場にある。したがって、自動車検問は、①交通違反の多発地域等の適当な場所で、②交通違反の予防・検挙のために、③不審な点の有無に関わらず短時分の停止・質問を求めるものであり、④任意の協力を求める形で行われ、⑤自由を不当に制約しない方法・態様である限り、適法となる。
重要事実
警察官が、交通取締の一環として交通違反が多発する地域等の場所において、走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく、当該場所を通過する自動車に対して短時分の停止を求め、運転者等に対し必要な事項について質問等を行う自動車検問を実施した(なお、第一審判決が認定した具体的な検問の態様については本判決文からは不明)。
あてはめ
本件検問は、交通違反の予防・検挙という正当な目的のために適切な場所で行われ、停止時間も短時分であった。外観上の不審点の有無にかかわらず一律に行われたが、相手方の任意の協力を求める形を維持していた。また、自動車利用者の自由を不当に制約するような強制的・威圧的な態様であったとは認められない。したがって、運転者が公道利用に際して負担すべき合理的な範囲内の制限にとどまるものといえる。
結論
本件自動車検問は適法な任意捜査の範囲内であり、これに基づき得られた証拠等を用いて有罪とした原判断は正当である。
実務上の射程
本判決は、交通検問(一斉検問)の適法性を認めたリーディングケースである。答案上では、警職法2条1項の「職務質問」の要件(不審事由)を充足しない場合でも、警察法2条1項を根拠に、任意捜査の限界(必要性・緊急性・相当性)の枠組みで適法性を肯定する論理として活用する。
事件番号: 昭和55(あ)602 / 裁判年月日: 昭和55年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所による証人採否の決定は、裁判所に与えられた広範な自由裁量に属する事項であり、その措置が裁量の範囲内にある限り、憲法32条(裁判を受ける権利)や37条2項(証人審問権)に違反しない。 第1 事案の概要:刑事被告人側が原審において証人尋問を求めたが、原裁判所はこれを不採用とする措置を講じた。これ…