民訴法一七二条は刑事手続における書類の送達について準用される。
刑事手続における書類の送達と民訴法一七二条の準用 民訴法一七二条は刑事手続における書類の送達については準用されるか
刑訴法54条,刑訴規則63条,民訴法171条,民訴法172条
判旨
刑事手続における書類の送達について、民事訴訟法上の付郵便送達に関する規定(旧民訴法172条、現行107条)は、刑訴法54条により準用される。これにより、他の方法で送達できない場合には、住居等の届出義務違反がない場合であっても、書留郵便に付する送達を行うことが可能である。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法54条による民事訴訟法の準用に関し、刑訴規則62条所定の届出義務違反がない場合であっても、民訴法上の付郵便送達の規定(現行107条)を準用して送達を行うことができるか。
規範
刑事訴訟法54条は、書類の送達に関し、裁判所規則に特別の定めがある場合を除き、民事訴訟に関する法令の規定を準用すると定めている。刑訴規則63条は民訴法上の補充送達・差置送達(現行106条)に対する特別規定であるが、付郵便送達を住居等の届出義務違反がある場合に限定する趣旨(刑訴規則62条)ではない。したがって、民訴法上の付郵便送達の規定(現行107条)は、刑事手続においても、他の方法で送達できない場合に広く準用されると解すべきである。
重要事実
申立人は恐喝罪で懲役1年、執行猶予3年の判決を受け確定した。その後、猶予期間内に執行猶予取消決定がなされ、申立人は即時抗告したが棄却された。裁判所書記官は、棄却決定謄本を廷吏や執行官により複数回送達しようとしたが、申立人宅が全戸不在のため送達不能となった。そこで、猶予期間満了直前の昭和52年1月4日に書留郵便による付郵便送達を行い、同日発送した。申立人は、この付郵便送達の適否を争った。
事件番号: 平成3(し)59 / 裁判年月日: 平成3年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法54条により準用される民事訴訟法上の付郵便送達の方法は、刑事手続における裁判書の送達についても適法に認められる。送達が適法になされた場合、その翌日から起算して特別抗告の提起期間を徒過した申立ては不適法として棄却される。 第1 事案の概要:本件において、原決定(下級審の決定)の謄本は、平成…
あてはめ
本件では、書記官が廷吏や執行官を通じて複数回にわたり送達を試みたが、申立人方の全戸不在という事由により、民訴法上の通常の送達(現行101条等)や補充送達等(現行106条)をすることができない場合に該当する。この状況下で、刑訴法54条に基づき準用される民訴法上の付郵便送達の規定に従い、書留郵便に付して発送したことは適法である。発送時(昭和52年1月4日)に送達があったものとみなされるため、執行猶予期間内に取消しの効果が発生したといえる。
結論
刑事手続においても、民訴法上の付郵便送達の規定は準用され、本件の送達は適法である。したがって、執行猶予取消しの効力は期間内に発生しており、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
刑事手続における送達の適法性が争点となる場面(特に執行猶予期間満了間際の取消決定や上訴提起期間の起算点など)で、民訴法の準用範囲を確定させる際に活用する。刑訴規則62条(届出義務違反)という限定的な場面以外でも、民訴法上の付郵便送達が可能であることを示す根拠となる。
事件番号: 昭和54(し)110 / 裁判年月日: 昭和54年11月5日 / 結論: 棄却
決定裁判所を構成する裁判官の表示を欠く決定謄本は、刑訴規則五七条一項に違反するが、右のような謄本であつても、裁判を受ける者の氏名、決定の主文、その理由及び決定裁判所が東京高裁第六刑事部であることが明示されており、決定の名宛人において、右決定が自己がさきに抗告をした東京高等裁判所の第六刑事部においてなされたものであること…
事件番号: 昭和54(し)29 / 裁判年月日: 昭和54年3月29日 / 結論: 棄却
刑の執行猶予言渡取消決定に関する特別抗告の係属中に執行猶予期間に相当する期間が経過したことは、すでに発生している執行猶予取消の効果に影響しない。
事件番号: 昭和47(し)57 / 裁判年月日: 昭和47年12月26日 / 結論: その他
特別送達の方法により、執行猶予取消決定についての即時抗告棄却決定の謄本を、被請求人に送達する手続をとつたところ、それが執行猶予期間内に送達されなかつた場合において、右特別送達を付郵便送達とすることにより、有効に執行猶予が取り消されたものとすることはできない。
事件番号: 平成1(し)10 / 裁判年月日: 平成元年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の執行猶予言渡取消手続の抗告審において、口頭弁論を開くことなく書面審理によって裁判を行うことは、憲法31条、32条、37条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、刑の執行猶予言渡しの取消しがなされた。これに対し被告人が抗告を申し立てたところ、抗告審において口頭弁論が開かれることなく、…