控訴の趣意として、「一 原判決は明らかに判決に影響を及ぼす事実の誤認がある。二 原判決は量刑が不当である。追つて詳細は書面で述べる。」と記載したにすぎない控訴趣意書は、刑訴法三八二条、三八一条所定の事実の援用を欠き、法律で定める方式に違反する。
控訴趣意書の記載が法律で定める方式に違反するとされた事例
刑訴法381条,刑訴法382条,刑訴法386条1項2号
判旨
控訴趣意書に具体的な事実の援用がなく「事実誤認」「量刑不当」とのみ記載されたものは法律上の方式に違反し、差出期間経過後の補充書によってもその瑕疵は補正されない。
問題の所在(論点)
「事実誤認がある」とのみ抽象的に記載された控訴趣意書の適法性(法律上の方式違反の成否)、および差出期間経過後の補充書による追完の可否が問題となる。
規範
控訴趣意書は、刑訴法382条(事実誤認)または381条(量刑不当)所定の具体的な事実の援用を欠く場合には、法律で定める方式に違反(刑訴法386条1項2号)したものと解すべきである。また、差出期間経過後に提出された補充書によって、当初の方式違反の瑕疵が遡及的に補正されることはない。さらに、刑訴規則238条の「やむを得ない事情」がない限り、期間経過後の書面を期間内に差し出されたものとして扱うことはできない。
重要事実
控訴人が提出した控訴趣意書には、「一 原判決は明らかに判決に影響を及ぼす事実の誤認がある。二 原判決は量刑が不当である。追って詳細は書面で述べる。」とのみ記載されていた。控訴趣意書の差出期間経過後に、具体的な主張を記載した「控訴趣意書補充書」が差し出されたが、原審は方式違反を理由に控訴を棄却したため、控訴人が特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件控訴趣意書の記載は、単に事実誤認や量刑不当の表題を掲げたに等しく、刑訴法が求める具体的な事実の援用が皆無である。したがって、本件趣意書は法律で定める方式に違反しているといえる。また、期間経過後に提出された補充書は、適法な期間内に提出されたものではない以上、当初の書面の瑕疵を治癒させる効果は認められない。本件において刑訴規則238条の「やむを得ない事情」を認めるべき特段の事情も存しないため、期間内の提出として審判することはできないと解される。
結論
本件控訴趣意書は法律上の方式に違反しており、期間経過後の補充によっても補正されないため、刑訴法386条1項2号により控訴を棄却した原決定は正当である。
実務上の射程
控訴趣意書の形式的要件に関する重要判例である。答案上は、具体的理由を欠く「白紙控訴趣意書」の効力否定と、期間経過後の補正を認めない厳格な手続運用の根拠として活用すべきである。
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