公判手続の停止に関する刑訴法三一四条一項の規定は控訴審の手続に準用される。
控訴審の手続と刑訴法三一四条一項の準用の有無
刑訴法314条1項,刑訴法404条
判旨
刑事訴訟法314条1項の公判手続停止の規定は、被告人の防御権を保障する上で基本的な重要性を有するため、同法404条により控訴審においても準用される。したがって、被告人が心神喪失の状態にある場合には、原則として控訴審の手続も停止しなければならない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法314条1項に基づく公判手続の停止規定が、控訴審においても準用されるか(被告人の防御権保障の要否)。
規範
刑事訴訟法314条1項は、被告人の訴訟における防御権を全うさせる上で基本的な重要性を有する規定である。被告人の防御権は、事後審たる性質を持つ控訴審においても同様に保障されるべきであるから、同条項の規定は、同法404条により控訴審の手続にも準用される。したがって、被告人が心神喪失の状態にあるときは、無罪、免訴等の裁判をすべきことが明らかな場合を除き、公判手続を停止しなければならない。
重要事実
被告人は一審で懲役3年6月の判決を受け控訴したが、控訴趣意書の提出期限直前に精神状態が悪化し、精神科医により精神分裂病と診断された。重篤な幻覚・妄想、人格水準の著しい低下、判断力不能の状態にあり、治癒の見込みもない状況であった。弁護人が手続停止を求めたが、原審(控訴審)は停止措置をとらず、被告人欠席のまま弁論を終結し、一審判決を破棄して被告人を懲役2年に処する判決を言い渡した。
事件番号: 昭和33(あ)1176 / 裁判年月日: 昭和34年2月12日 / 結論: 棄却
一 行使の目的をもつて有効に成立している他人振出名義の小切手の金額欄の数字をインキ消で抹消した上、ほしいままに同欄に別の金額をあらたにペンで記入したときは、有価証券の偽造罪ではなく、その変造罪が成立する。 二 有価証券の変造にあたるものと解すべき場合に、第一審判決がこれを有価証券の偽造にあたると判示したとしても、判決を…
あてはめ
被告人は、著明な幻覚や妄想、判断力不能等の症状があることから、刑訴法314条1項にいう「心神喪失の状態」にあることが明らかである。同条項が控訴審にも準用される以上、原審は直ちに公判手続を停止すべきであった。これを行わず、被告人が防御権を適切に行使できない状態で審理を進め有罪判決を言い渡した原審の訴訟手続には、同法314条1項及び404条の解釈適用を誤った違法がある。この違法は、被告人の防御権という基本的人権を侵害するものであり、判決に影響を及ぼすべき重大な誤りであって、著しく正義に反するといえる。
結論
被告人が心神喪失状態にある場合、控訴審においても公判手続を停止しなければならない。これに反して手続を進めた原判決は、訴訟手続の法令違反を理由に破棄を免れない。
実務上の射程
第一審のみならず、控訴審においても心神喪失による手続停止の必要性を認めた点に射程がある。被告人が公判に出頭せず書面審理が中心となる控訴審であっても、被告人本人の防御権(弁護人への指示や自己の意思表明等)が不可欠であることを重視する判断枠組みとして、実務上極めて重要である。
事件番号: 昭和27(あ)4393 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論の分離・併合は裁判所の自由裁量に属する事項であり、当事者の請求に拘束されるものではない。また、控訴審において第1審で請求し得た証拠の申出を却下することは、特段の事由がない限り裁判所の合理的な裁量の範囲内である。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、控訴審(原審)の第3回公判期日において、被告人…
事件番号: 昭和62(あ)114 / 裁判年月日: 昭和62年12月3日 / 結論: 棄却
誤つて公訴事実の同一性のない訴因の追加を許可し、その訴因についての証拠を取り調べた第一審裁判所は、右誤りを是正するために訴因追加の許可及び証拠の採用を各取消決定をすることができる。
事件番号: 昭和28(あ)1420 / 裁判年月日: 昭和28年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】先行する勾留の不法は、それ自体が原判決自体の違法を構成するものではなく、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反および判例違反等を理由に上告した事案。上告趣意において、事実誤認や証拠取捨選択の不当を主張するとともに、被告人は勾留の不法を訴え、これを理由として…