いわゆる記名代印方式による書面でした忌避等の申立は、無効である。
いわゆる記名代印方式による書面と申立の効力
刑訴規則60条,刑訴規則61条
判旨
記名代印によって作成された忌避申立書等の書類は、刑事訴訟規則の法意に照らし、不適法であり法律上無効である。
問題の所在(論点)
記名代印によって作成された忌避申立書等の訴訟書類について、刑事訴訟規則60条および61条の規定に照らし、その有効性が認められるか(書類作成の方式の適法性)。
規範
刑事訴訟規則60条および61条は、裁判所に提出すべき書類には、原則として作成者が署名押印すべきことを定めている。この規定の趣旨(法意)に照らせば、本人が自ら署名せず、他人が氏名を記した上で代わりの印章を押す「記名代印」の方法による書類提出は、特段の事情がない限り認められず、法律上無効な書面として取り扱うべきである。
重要事実
本件において、当事者は裁判官に対する忌避申立てを行ったが、その際に提出された忌避申立書等の書類は、本人の署名ではなく「記名代印」によって作成されたものであった。原審は、当該書類を不適法として無効と判断したため、抗告人がこれを不服として憲法31条、32条、37条等の違反を理由に特別抗告を申し立てた事案である。
事件番号: 昭和43(し)19 / 裁判年月日: 昭和43年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】忌避申立事件の原審裁判所が、特定の部(民事部等)によって構成されていること自体は、直ちに不適法となるものではない。 第1 事案の概要:抗告人は裁判官に対する忌避申立を行ったが、これに対する異議申立を棄却した原裁判所が名古屋高等裁判所の民事第三部であった。抗告人は、刑事事件に関連する手続(忌避)にお…
あてはめ
刑事訴訟規則60条、61条が署名押印を要求しているのは、文書の真正および作成者の責任を明確にするためである。本件の忌避申立書等は記名代印によって作成されており、作成者本人の意思に基づく真実の書面であることが形式上担保されていない。したがって、同規則の法意に照らせば、当該書類は作成方式を欠く不適法なものといえ、無効と判断せざるを得ない。
結論
記名代印による忌避申立書等の提出は不適法であり、法律上無効である。よって、これと同趣旨の原判断は相当であり、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
訴訟行為の方式(特に書面による申立て)の厳格性を示す判例である。実務上、署名に代えて記名押印が許容される場合(刑訴規則61条1項等)はあるが、記名代印(他人が記名し他人が押印する形態)は原則として認められない。答案上は、申立て等の訴訟行為の有効性が争点となった際、適式な書面の具備を論じる過程で本判例を引用し、方式の違背を指摘する際に活用できる。
事件番号: 昭和40(し)102 / 裁判年月日: 昭和41年2月3日 / 結論: 棄却
一 本件について差し出された抗告申立書には「氏名不詳一九六五年七月九日から七月一六日まで名古屋拘置所一階三五房三七九号の男」という記載があるだけであつて、被告人の署名は存在しない。 二 被告人の氏名について、黙秘権がないことは、当裁判所大法廷の判例(昭和二七年(あ)第八三八号同三二年二月二〇日判決、集一一巻二号八〇二頁…
事件番号: 昭和28(し)98 / 裁判年月日: 昭和29年1月16日 / 結論: 棄却
所論は法廷警察権の行使方法が法令に違反するということを前提とし、忌避の理由がある旨主張するに止まり、この点に関する原決定の判断は正当であるから、所論は憲法の各条規に違反するという前提を欠く。註。原決定は法廷警察権の行使に対しても刑訴三〇九条二項の異議を申し立てることができるが、この判断を誤つたからといつて忌避の理由あり…
事件番号: 昭和46(し)92 / 裁判年月日: 昭和46年11月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法433条に基づく特別抗告において、実質的に単なる法令違反を主張するものは、同条所定の抗告理由に当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対し刑訴法433条に基づき特別抗告を申し立てた。抗告の趣意において抗告人は「違憲」を主張したが、その実質的な内容は、憲法問題ではなく単なる法令の適用…
事件番号: 昭和27(し)41 / 裁判年月日: 昭和28年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が決定を下すに当たり、憲法に違反する憲法解釈上の誤りや、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反が認められない場合には、特別抗告を棄却すべきである。本件においては、憲法違反を主張する抗告人の主張に理由がないとして、特別抗告を棄却した。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して特別抗告を申し…