国立大学の構内に在る附置研究所建物に接してその周辺に存在し、かつ、管理者が既存の門塀等の施設と新設の金網柵とを連結して完成した一連の囲障を設置することにより、建物の附属地として建物利用のために供されるものであることが明示された本件土地(判文参照)は、右金網柵が通常の門塀に準じ外部との交通を阻止しうる程度の構造を有するものである以上、囲障設置以前における右土地の管理、利用状況等からして、それが本来建物固有の敷地と認めうるものかどうか、また、囲障設備が仮設的構造をもち、その設置期間も初めから一時的なものとして予定されていたかどうかを問わず、同研究所建物のいわゆる囲繞地として、建造物侵入罪の客体にあたる。
建造物侵入罪の客体となるいわゆる囲繞地にあたるとされた事例
刑法130条
判旨
刑法130条前段の「建造物」には、建物に接して周囲に存在し、管理者が外部との境界に門塀等の囲障を設置して建物利用に供することを明示した「囲繞地」も含まれる。囲障が通常の門塀に準じ外部との交通を阻止し得る構造を有する以上、本来の敷地性や設備の仮設性・一時性を問わず、囲繞地にあたる。
問題の所在(論点)
刑法130条前段の「人の看守する建造物」に含まれる囲繞地の判断基準、特に後から設置された仮設的・一時的な囲障によって囲繞地性が認められるか。
規範
刑法130条にいう「人の看守する建造物」には、その囲繞地も含まれる。囲繞地とは、①建物に接してその周辺に存在し、かつ、②管理者が外部との境界に門塀等の囲障を設置することにより、建物の附属地として建物利用のために供されるものであることが明示されている土地をいう。囲障が通常の門塀に準じ外部との交通を阻止し得る程度の構造を有するものである以上、設置以前の土地の管理・利用状況から本来建物固有の敷地と認め得るか、また、囲障設備が仮設的構造で一時的な設置予定であったかは問わない。
重要事実
被告人らは、他百数十名の学生らと共謀し、東京大学宇宙航空研究所(A)構内へ、南側通路に設置されていた金網柵(高さ2.24メートル、幅16.3メートル)を引き倒して乱入した。当該土地は、従来は大学構内の通路や駐車場として広く利用されていたが、紛争に伴いA所長が管理権の委任を受け、既存の塀やテニスコートの金網を連結するように新たな金網柵を構築し、外部からの立ち入りを禁止した直後の出来事であった。原審は、当該金網柵は一時的な立ち入り阻止のための仮設的なものに過ぎず、土地の性質を囲繞地へと変えるものではないとして無罪とした。
あてはめ
本件土地はA建物に接してその周辺に位置しており、既存の塀、通用門、テニスコートの金網に加え、新たに構築された金網柵によって一連の障壁に囲まれていた。この金網柵は高さ2メートルを超え、通常の門塀に準じて外部との交通を阻止し得る構造を有している。このような囲障の設置により、当該土地が建物の附属地として利用されることが客観的に明示されたといえる。囲繞地を客体とする趣旨は、そこへの侵入が建造物自体の利用の平穏を害することにあるため、設置前の利用実態や、設備が仮設的・一時的なものであったとしても、上記明示がある以上は囲繞地にあたると解するのが相当である。
結論
本件土地はA建物の囲繞地であり「人の看守する建造物」にあたる。したがって、ここに故なく侵入した被告人らには建造物侵入罪が成立する。
実務上の射程
囲繞地の判断において「本来の敷地性」や「囲障の恒久性」を不要とし、外形的・客観的な遮断状況(平穏の保護)を重視する。大学構内のように多目的な広場であっても、バリケードやフェンス等で特定の建物に付随して区画・管理されれば、その時点から建造物侵入罪の客体となり得ることを示した点で、実務上の射程は広い。
事件番号: 平成20(あ)835 / 裁判年月日: 平成21年7月13日 / 結論: 棄却
警察署庁舎建物及び中庭への外部からの交通を制限し,みだりに立入りすることを禁止するために設置された高さ約2.4mの本件塀は,建造物侵入罪の客体に当たり,中庭に駐車された捜査車両を確認する目的で本件塀の上部に上がった行為は,建造物侵入罪を構成する。