一 預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条、四条一号は、金融機関に預金等をする者又は金融機関に預金等をすることについて媒介をする者と通じた特定の第三者については、その物が自ら預金等をすることについて媒介をする場合を除き、預金者又は媒介者の共犯としても処罰しない趣旨である。 二 被告人が、金融機関の役員に対し自己への融資方を申し込むとともに併せて金融機関の貸出し資金の確保については然るべき預金をあつせんすることを約したうえ、甲に対し、自己が事業資金とするために金融機関から融資を受けようとしているが、それについては引き当てとなる預金が必要なので、預金者には、相応の謝礼をするので然るべき預金をあつせんしてくれるよう依頼した場合において、被告人は預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条二項に規定する金融機関に預金等をすることについて媒介をする者にあたらない。
一 預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条、四条一号と金融機関に預金等をする者又は金融機関に預金等をすることについて媒介をする者と通じた特定の第三者の処罰 二 預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条二項にいう「金融機関に預金等をすることについて媒介をする者」にあたらないとされた事例
預金等に係る不当契約の取締に関する法律2条,預金等に係る不当契約の取締に関する法律4条1号,刑法60条,刑法61条,刑法62条
判旨
「預金等に係る不当契約の取締に関する法律」が特定の第三者を処罰する規定を欠く以上、自ら媒介行為を行う場合を除き、媒介者と共謀したとしても特定の第三者を共犯として処罰することはできない。
問題の所在(論点)
預金等に係る不当契約の取締に関する法律(本法)において処罰規定のない「特定の第三者」が、媒介者と共謀して不当契約に関与した場合、刑法総則の共犯規定を適用して処罰できるか。
規範
本法が特定の第三者を処罰する規定を置いていないことに鑑みれば、特定の第三者が自ら預金等の媒介をする場合を除き、これを処罰しない趣旨であると解すべきである。したがって、特定の第三者が預金者や媒介者と通じた内容が、一般に共謀、教唆、幇助に当たる場合であっても、刑法総則の共犯規定を適用して処罰することは許されない。
事件番号: 昭和45(あ)271 / 裁判年月日: 昭和46年4月9日 / 結論: 棄却
預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条一項にいう「特定の第三者と通じ」とは、預金者と特定の第三者との間に意思の連絡のあることを意味するものではあるが、必ずしも直接であることを必要せず、媒介者がある場合には、その者を介して意思の連絡があれば足り、預金と融資との間に、預金がなされることによつて融資が行なわれ、融資のため…
重要事実
被告人Aは、自らの資金繰りのため、信用組合の専務理事に対し、預金を見返りとする融資を依頼した。その際、知人Bに対し「融資の引き当てとなる預金者を斡旋してくれれば相応の謝礼をする」と依頼した。Bはこれに応じてDを預金者として紹介し、Aが裏金利を支払う等の不当契約を成立させた。原審は、Aが媒介行為を企図してBと共謀し、媒介行為の一部を実行したとして、Aを媒介者(本法2条2項)の共同正犯として処罰した。
あてはめ
Aの行為は、Bに対して預金の媒介を依頼したにとどまる。このような依頼行為は、本法2条2項が想定する「特定の第三者が媒介者と通じること」の典型的な内容であり、特定の第三者が通常行う範囲内の行動にすぎない。A自身が主体的に預金の媒介を行ったとは認められない以上、処罰規定のない特定の第三者であるAを、媒介者Bの共同正犯として処罰することは、本法の処罰範囲を不当に拡大するものである。
結論
特定の第三者が媒介者と共謀したとしても、自ら媒介行為を行わない限り、本法違反の共犯として処罰することはできない。原判決は法令の解釈適用を誤っており、破棄を免れない。
実務上の射程
対向犯的性質を持つ特別刑法において、一方の当事者(本件では特定の第三者)のみを処罰対象から除外している場合、刑法総則の共犯規定を適用してその処罰を認めることは「法の欠缺」を埋めることになり許されないという、修正形式的客観説に近い立場を示す。答案上は、特別法の解釈として処罰範囲の限定を論じる際の有力な論拠となる。
事件番号: 昭和45(あ)2415 / 裁判年月日: 昭和50年4月3日 / 結論: 破棄自判
刑法二四七条の背任の罪と預金等に係る不当契約の取締に関する法律五条一項一号の罪との間にいわゆる法条競合の関係はない。
事件番号: 平成8(あ)619 / 裁判年月日: 平成11年7月6日 / 結論: 棄却
一 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律三条の禁止する金銭の貸付け、金銭の貸借の媒介又は債務の保証は、金融機関の役職員等が、その業務の遂行としてではなく、自己の責任と計算において行うものであることを要する。 二 銀行支店長が、顧客らに対し、ノンバンク等から借入れをした上、いわゆる仕手筋と目される者の支配す…
事件番号: 昭和23(れ)1459 / 裁判年月日: 昭和24年2月8日 / 結論: 棄却
一 A方二回は、本件犯行(日本銀行券預入令の特例の件違反)の一場所として説示したにすぎないものであつて罪となるべき事實ではないから、證據によつて之れを認定する必要はない。 二 日本銀行券預入令の特例の件第一條は、所論證紙の種類並に様式は大蔵大臣が之れを定める旨を規定し、同令に基く昭和二一年大蔵省告示第三〇號は證紙の種類…