一 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律三条の禁止する金銭の貸付け、金銭の貸借の媒介又は債務の保証は、金融機関の役職員等が、その業務の遂行としてではなく、自己の責任と計算において行うものであることを要する。 二 銀行支店長が、顧客らに対し、ノンバンク等から借入れをした上、いわゆる仕手筋と目される者の支配する会社等に、仕手株等を高い掛目で担保にし、あるいは無担保で巨額の融資をするよう勧誘するなどして行った融資の媒介は、その融資資金の一部が銀行から顧客らに貸し付けられ、顧客らを紹介したことによりノンバンクが銀行に協力預金をしたことがあるからといって、銀行業務の遂行としてされたことになるものとはいえず、自己の責任と計算においておこなわれたものとして、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律三条の禁止する行為に該当する。
一 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律三条の禁止する行為の意義 二 銀行支店長による融資の媒介が出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律三条の禁止する行為に該当するとされた事例
出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律3条,出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律8条1項1号
判旨
出資法3条にいう「金銭の貸借の媒介」等の行為とは、金融機関の役職員等が、その業務の遂行としてではなく、自己の責任と計算において行うものを指す。銀行の支店長が、その地位を利用し、自己または第三者の利益を図る目的で、銀行の業務として許容されない条件の融資を媒介した場合には、同条違反の罪が成立する。
問題の所在(論点)
金融機関の役職員がその地位を利用して金銭の貸借を媒介した場合に、出資法3条(浮貸し等の禁止)の罪が成立するための要件、特に「業務の遂行」にあたるか否かの判断基準が問題となる。
規範
出資法3条が金融機関役職員等による金銭の貸借の媒介等を禁止する趣旨は、金融機関の信用失墜および預金者への不慮の損害を防止する点にある。かかる趣旨に鑑み、同条にいう媒介等は、役職員等がその業務の遂行としてではなく、「自己の責任と計算において」行うものであることを要すると解すべきである。
事件番号: 昭和43(あ)2408 / 裁判年月日: 昭和45年11月10日 / 結論: 棄却
金融機関の役員が、その地位を利用し、自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るため、金員の貸付をなす行為は、その貸付資金が当該役員個人のものであつても、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律三条の規定に違反する。
重要事実
銀行の支店長であった被告人は、顧客に対し、ノンバンク等から借り入れた資金を仕手筋が支配する会社等へ融資するよう勧誘し、11回にわたり金銭消費貸借契約を成立させ、融資を媒介した。融資条件は、仕手株等を8〜10割という高い掛目で担保にするか、あるいは無担保で10億〜50億円という巨額なものであった。被告人は銀行本部に実態が露見しないよう工作しており、一部に正規の銀行融資や協力預金が介在していたが、媒介行為自体は銀行の業務として許容されないものであった。
あてはめ
本件融資の媒介は、その融資先や条件(高掛目担保・無担保・巨額)に照らし、銀行業務として許容されないことは明らかである。被告人もこれを意識して本部へ隠蔽工作を行っている。一部の資金調達過程で正規の銀行業務が介在しているが、それは準備段階に過ぎず、媒介行為そのものが銀行業務の遂行としてなされたとはいえない。したがって、本件媒介は「自己の責任と計算において」行われたものと認められる。
結論
被告人の行為は出資法3条に禁止される行為に該当し、同条違反の罪が成立する。
実務上の射程
金融機関の役職員が個人的な利益等のために行う「浮貸し」の処罰範囲を画定する基準となる。答案上は、形式的に金融機関の看板を背負っている場合でも、実質的に「業務の遂行」か「自己の責任と計算」かを、融資条件の正当性や隠蔽工作の有無、金融機関の内部手続の経緯等から判断する際の枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和33(あ)1571 / 裁判年月日: 昭和36年9月8日 / 結論: 棄却
出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第二条、第一一条は、憲法第一四条に違反しない。
事件番号: 昭和35(あ)1803 / 裁判年月日: 昭和35年11月16日 / 結論: 棄却
出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律第七条第一項に「業として」とあるのは、反覆継続の意思を以て為す場合をいうのであつて、利益を得る目的を有することを必要としないと解した原判決の認定は正当である。
事件番号: 昭和37(あ)1829 / 裁判年月日: 昭和37年12月18日 / 結論: 棄却
出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第二条第二項にいわゆる「不特定」とは、一般大衆を指称し、たとえ一定の団体または集団に所属する物に限定されていても、その所属員が相当多数であつて、金銭の受入者との間に親族、知己等の如き個人的なつながりがない場合は、これにあたる。
事件番号: 昭和59(あ)1168 / 裁判年月日: 平成元年7月7日 / 結論: 棄却
買戻約款付自動車売買契約により自動車金融をしていた貸主が、借主の買戻権喪失により自動車の所有権を取得した後、借主の事実上の支配内にある自動車を承諾なしに引き揚げた行為は、刑法二四二条にいう他人の占有に属する物を窃取したものとして窃盗罪を構成する。