金融機関の役員が、その地位を利用し、自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るため、金員の貸付をなす行為は、その貸付資金が当該役員個人のものであつても、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律三条の規定に違反する。
金融機関の役員が自己の資金を貸し付ける行為と出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律三条
出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律3条,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律11条
判旨
金融機関の役員が、その地位を利用して自己または第三者の利益を図る目的で金員を貸し付ける場合、その原資が役員個人の資金であっても、出資法3条の禁止する役職員による金銭の貸付けに該当する。
問題の所在(論点)
金融機関の役員が、その地位を利用して金員の貸付けを行う際、その原資が当該役員個人のものである場合に、出資法3条(役職員による金銭の貸付け等の禁止)の罪が成立するか。
規範
出資法3条(金融機関の役職員による金銭の貸付け等の禁止)の規定に違反するか否かは、当該行為が「金融機関の役員、職員その他これに準ずる者」が「その地位を利用し」て行われたか否かによって判断される。したがって、貸付資金の出所が当該役員個人のものであるか否かは、同条の成立を左右するものではない。
重要事実
金融機関の役員である被告人が、その地位を利用し、自己または当該金融機関以外の第三者の利益を図る目的で、金員の貸付けを行った。この際、貸し付けられた資金の原資は、当該役員(被告人)個人のものであった。
事件番号: 平成8(あ)619 / 裁判年月日: 平成11年7月6日 / 結論: 棄却
一 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律三条の禁止する金銭の貸付け、金銭の貸借の媒介又は債務の保証は、金融機関の役職員等が、その業務の遂行としてではなく、自己の責任と計算において行うものであることを要する。 二 銀行支店長が、顧客らに対し、ノンバンク等から借入れをした上、いわゆる仕手筋と目される者の支配す…
あてはめ
本件において、被告人は金融機関の役員という地位にあり、かつ、その地位を奇貨として貸付けを行っている。出資法3条の趣旨は金融機関の役職員がその職務上の地位を悪用して私利を図ることを防止することにある。そうすると、金員を貸し付けるに際してその原資が役員個人のものであるとしても、地位を利用した貸付けである以上、同条の禁止する行為の類型に該当すると評価できる。
結論
金融機関の役員個人の資金を原資とする貸付けであっても、その地位を利用してなされたものである以上、出資法3条違反が成立する。
実務上の射程
金融機関の役職員が「地位を利用」したかどうかが判断の核心であり、原資の帰属といった形式的事実によって処罰範囲が狭められることはないことを示した。答案上は、同条の「地位を利用し」という要件を解釈する際、職務遂行との密接関連性や弊害の有無から実質的に判断する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(あ)1571 / 裁判年月日: 昭和36年9月8日 / 結論: 棄却
出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第二条、第一一条は、憲法第一四条に違反しない。
事件番号: 昭和35(あ)1803 / 裁判年月日: 昭和35年11月16日 / 結論: 棄却
出資の受入、預り金及び金利等の取締に関する法律第七条第一項に「業として」とあるのは、反覆継続の意思を以て為す場合をいうのであつて、利益を得る目的を有することを必要としないと解した原判決の認定は正当である。
事件番号: 昭和42(あ)284 / 裁判年月日: 昭和43年4月16日 / 結論: 棄却
本件起訴状記載の公訴事実を客観的に観察すれば、本件は被告人個人の犯罪行為を起訴した趣旨と解されること所論のとおりであるが、その事実記載の方法および第一審裁判所における審理の経過に徴し、これを被告人が法人の機関としてその業務に関して行なつたものと認定するには、訴因変更の手続を経ることを要しないものと解するのを相当とするか…
事件番号: 昭和45(あ)2415 / 裁判年月日: 昭和50年4月3日 / 結論: 破棄自判
刑法二四七条の背任の罪と預金等に係る不当契約の取締に関する法律五条一項一号の罪との間にいわゆる法条競合の関係はない。