刑法二四七条の背任の罪と預金等に係る不当契約の取締に関する法律五条一項一号の罪との間にいわゆる法条競合の関係はない。
背任罪と預金等に係る不当契約の取締に関する法律五条一項一号の罪は法条競合か
刑法第1編第9章,刑法247条,預金等に係る不当契約の取締に関する法律5条1項1号,預金等に係る不当契約の取締に関する法律5条2項,預金等に係る不当契約の取締に関する法律3条
判旨
預金等不当契約取締法5条の罪と刑法247条の背任罪は、保護法益や構成要件の仕組みが異なるため法条競合の関係にはなく、各要件を充足する限り別個独立に成立する。
問題の所在(論点)
預金等不当契約取締法5条の罪が成立する場合に、背任罪(刑法247条)は法条競合として排斥されるのか、あるいは背任罪の成立範囲が制限されるのか。
規範
預金等不当契約取締法5条の罪と背任罪(刑法247条)は、犯罪構成要件の仕組み、制裁の趣旨・対象、保護法益等の点において重要な一般的差異が存する。したがって、両者が一個の行為により行われる場合であっても法条競合(択一関係)にあるとは解されず、各構成要件を充足する限り別個独立に成立する。また、同法5条の罪が成立するからといって背任罪の成立範囲が縮小限定されるものではない。
重要事実
被告人A(信用金庫支店長)は、被告人Bから斡旋された預金を担保としない融資の申し込みを承諾し、Bの利益を図る目的で、十分な担保を徴収せず合計8200万円を融資した。これにより、信用金庫に回収不能の危険(財産上の損害)を生じさせた。原審は、不当な融資の約束を処罰する預金等不当契約取締法5条と背任罪は法条競合の関係にあり、本件は同法違反に留まり、それを超えて背任罪を構成する証明がないとして、背任罪の成立を否定した。
事件番号: 昭和42(あ)573 / 裁判年月日: 昭和43年2月12日 / 結論: 棄却
信用金庫の専務理事が、株式払込の仮装につき請託を受け、その費用ならびに謝礼の趣旨で、いずれの部分が費用でありいずれの部分が謝礼であるか区別できない関係で一括して金員を収受した場合、その金員の全額について経済関係罰則の整備に関する法律第二条所定の賄賂収受罪が成立し、その全額が追徴の対象になるものと解すべきである。
あてはめ
預金等不当契約取締法は金融秩序の維持等を目的とする政策的な取締法規であり、融資の約束があれば直ちに既遂となる抽象的危険犯である。これに対し、背任罪は具体的損害の発生を要件とし、図利加害目的を要素とする。本件A・Bの行為は、十分な担保なしに融資を行い回収不能の危険を生じさせたものであり、背任罪の構成要件を充足する。同法5条の罪が成立する事実があっても、保護法益や処罰の趣旨が異なる以上、背任罪の成立は妨げられず、本件では両罪が併合罪として成立すると解される。
結論
被告人AおよびBにつき、背任罪の共同正犯が成立する。原判決には法令の解釈適用の誤りがある。
実務上の射程
特別刑法と刑法典の罪が重なる場合の罪数関係に関する重要判例である。行政取締目的の罪が成立する場合であっても、背任罪の成立が直ちに否定されたり、その成立範囲が不当に限定されたりすることはないことを示す際に活用すべきである。
事件番号: 昭和43(あ)2408 / 裁判年月日: 昭和45年11月10日 / 結論: 棄却
金融機関の役員が、その地位を利用し、自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るため、金員の貸付をなす行為は、その貸付資金が当該役員個人のものであつても、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律三条の規定に違反する。
事件番号: 昭和49(あ)1839 / 裁判年月日: 昭和51年3月18日 / 結論: 破棄差戻
一 預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条、四条一号は、金融機関に預金等をする者又は金融機関に預金等をすることについて媒介をする者と通じた特定の第三者については、その物が自ら預金等をすることについて媒介をする場合を除き、預金者又は媒介者の共犯としても処罰しない趣旨である。 二 被告人が、金融機関の役員に対し自己への…
事件番号: 昭和45(あ)271 / 裁判年月日: 昭和46年4月9日 / 結論: 棄却
預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条一項にいう「特定の第三者と通じ」とは、預金者と特定の第三者との間に意思の連絡のあることを意味するものではあるが、必ずしも直接であることを必要せず、媒介者がある場合には、その者を介して意思の連絡があれば足り、預金と融資との間に、預金がなされることによつて融資が行なわれ、融資のため…