預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条一項にいう「特定の第三者と通じ」とは、預金者と特定の第三者との間に意思の連絡のあることを意味するものではあるが、必ずしも直接であることを必要せず、媒介者がある場合には、その者を介して意思の連絡があれば足り、預金と融資との間に、預金がなされることによつて融資が行なわれ、融資のために預金がなされるという相互依存の関係があることを預金者が知つていれば、特定の第三者または預金者がだれであるかにつき、互いに具体的個別的に認識することがなくても、媒介者を介して意思の連絡があるものとして、右の要件をみたすものというべきである。
預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条一項にいう「特定の第三者と通じ」の意義
預金等に係る不当契約の取締に関する法律2条1項,預金等に係る不当契約の取締に関する法律4条1号
判旨
「預金等に係る不当契約の取締に関する法律」2条1項にいう「特定の第三者と通じ」とは、媒介者を介して意思の連絡があれば足り、互いに具体的個別的な認識は不要である。
問題の所在(論点)
預金等に係る不当契約の取締に関する法律2条1項の「特定の第三者と通じ」の意義、および直接の面識や具体的認識がない媒介者を介した取引において同要件が充足されるか。
規範
「特定の第三者と通じ」とは、預金者と特定の第三者との間に意思の連絡があることを意味するが、それは必ずしも直接であることを必要とせず、媒介者がある場合にはその者を介して意思の連絡があれば足りる。すなわち、預金と融資の間に相互依存の関係があり、預金者においてその関係を知っていれば、相手方の具体的個別的な認識がなくても「通じ」たものと解すべきである。
重要事実
会社役員のCは、自社らへの融資を得るため、媒介者D、E、Fを順次介して導入預金のあっせんを求めた。被告人らはFから勧誘を受け、Cの氏名や会社名を確知しないまま、本件預金により融資の利益を受ける第三者がいることを認識した上で、その者に融資を受けさせるために預金契約を承諾し、実行した。
事件番号: 昭和49(あ)1839 / 裁判年月日: 昭和51年3月18日 / 結論: 破棄差戻
一 預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条、四条一号は、金融機関に預金等をする者又は金融機関に預金等をすることについて媒介をする者と通じた特定の第三者については、その物が自ら預金等をすることについて媒介をする場合を除き、預金者又は媒介者の共犯としても処罰しない趣旨である。 二 被告人が、金融機関の役員に対し自己への…
あてはめ
被告人らは、具体的な融資希望者の氏名等を把握していなかったものの、預金を行うことで融資が実行されるという相互依存関係を認識していた。複数の媒介者(D、E、F)が存在するが、これらを通じて間接的に意思の連絡が行われている。したがって、特定の第三者との間で「通じ」ていると評価できる。
結論
被告人らについて、預金等に係る不当契約の取締に関する法律2条1項違反の罪が成立する。
実務上の射程
共謀共同正犯や特殊詐欺などの「通謀」が問題となる事案において、直接の接触がない場合や相手方の特定性が低い場合でも、共通の目的に向けた相互依存的な認識があれば足りるとする判断枠組みとして参考になる。
事件番号: 昭和45(あ)2415 / 裁判年月日: 昭和50年4月3日 / 結論: 破棄自判
刑法二四七条の背任の罪と預金等に係る不当契約の取締に関する法律五条一項一号の罪との間にいわゆる法条競合の関係はない。
事件番号: 昭和42(あ)573 / 裁判年月日: 昭和43年2月12日 / 結論: 棄却
信用金庫の専務理事が、株式払込の仮装につき請託を受け、その費用ならびに謝礼の趣旨で、いずれの部分が費用でありいずれの部分が謝礼であるか区別できない関係で一括して金員を収受した場合、その金員の全額について経済関係罰則の整備に関する法律第二条所定の賄賂収受罪が成立し、その全額が追徴の対象になるものと解すべきである。
事件番号: 昭和34(あ)903 / 裁判年月日: 昭和36年3月28日 / 結論: 棄却
商法第四九一条前段の預合とは、同法第四八六条第一項に掲げる者が株金の払込を仮装するために、株金払込を取扱う機関の役職員らと通謀してなす仮装行為をいうものと解すべきである。
事件番号: 昭和43(あ)2408 / 裁判年月日: 昭和45年11月10日 / 結論: 棄却
金融機関の役員が、その地位を利用し、自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るため、金員の貸付をなす行為は、その貸付資金が当該役員個人のものであつても、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律三条の規定に違反する。