一 道路交通法三六条二項にいう明らかに幅員の広い道路とは、交差点を挟む前後を通じて、交差点を挟む左右の交差道路のいずれと比較しても明らかに幅員の広い道路をいい、その一方のみと比較して明らかに幅員の広い道路は含まない。 二 赤色の燈火の点滅信号を表示する道路を進行する車両の運転者は、交差道路が黄色の燈火の点滅信号を表示している交差点においては、所定の停止位置で一時停止し、再度発進して交差点に進入するにあたっては、交差道路上の交通の安全を確認し、接近してくる車両との衝突の危険を回避するためその進行妨害を避けるなど所要の措置をとるべき注意義務がある。
一 道路交通法三六条二項にいう明らかに幅員の広い道路の意義 二 交差点において赤色の燈火の点滅信号を表示する道路を進行する車両の運転者の注意義務
道路交通法36条2項,刑法211条,道路交通法施行令2条1項
判旨
赤色の点滅信号に対面する車両の運転者は、一時停止する義務に加え、交差道路の車両の進行を妨害しないよう安全を確認し、衝突回避措置を講じる注意義務を負う。また、「明らかに幅員の広い道路」とは、交差点を挟む前後両方の道路が、左右の交差道路のいずれと比較しても明らかに広い場合を指す。
問題の所在(論点)
1. 道路交通法36条2項にいう「明らかに幅員の広い道路」の意義。 2. 赤色点滅信号に従い一時停止した運転者が、再発進時に負う注意義務の内容。
規範
1. 道路交通法36条2項の「明らかに幅員の広い道路」とは、交差点を挟む前後を通じて、交差道路のいずれと比較しても明らかに幅員の広い道路を指し、一方のみとの比較では足りない。 2. 赤色の点滅信号に対面する運転者は、一時停止義務に加え、再発進時に交差道路の安全を確認し、接近車両の進行妨害を避けるべき注意義務を負う。これは一時停止義務に当然に伴うものであり、これによらなければ黄色点滅信号側の車両との優先関係が逆転し、道路交通上の安全が確保できないためである。
重要事実
被告人は、南北道路を南進中、赤色点滅信号のある交差点で一時停止した。その際、右方の東西道路(黄色点滅信号)を時速約55キロメートルで進行してくるA車を約50メートルの距離に認めたが、先に通過できると軽信して時速約5キロメートルで発進・進入した。その結果、交差点内でA車と衝突した。なお、東西道路の幅員は10.1メートルであり、南北道路は交差点の北側が6.2メートル、南側が9.1メートルであった。
あてはめ
1. 本件東西道路(10.1m)は、交差点北側の道路(6.2m)よりは広いが、南側の道路(9.1m)との差は僅かであり、前後を通じて「明らかに幅員が広い」とはいえない。したがって、道交法36条2項による優先関係は認められない。 2. しかし、被告人は赤色点滅信号により一時停止を義務づけられていた以上、一時停止に付随して交差道路(黄色点滅信号)の安全を確認し、接近するA車の進行を妨害しない義務がある。被告人は約50メートル地点にA車を認めていたのであるから、自車の発進を見合わせ、A車の通過を待つべきであった。先に通過できると過信して発進した点に、業務上の注意義務違反(過失)が認められる。
結論
被告人には業務上過失致死傷罪(当時の罪名)が成立する。原判決の幅員に関する解釈には誤りがあるが、過失を認めた結論は正当であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
過失運転致死傷罪等の事案において、優先道路の判断(道交法36条2項)と、一時停止義務に伴う安全確認義務の範囲を確定する際に用いる。特に、優先関係が不明確な交差点であっても、点滅信号の色の違い(赤対黄)によって実質的な優先関係が生じることを論証する際に有用である。
事件番号: 昭和42(あ)211 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
一 車両等が、道路交通法第四二条にいう「交通整理の行なわれていない交差点で左右の見とおしのきかないもの」に進入しようとする場合において、その進路が同法第三六条により優先道路の指定を受けているとき、またはその幅員が明らかに広いため、同条により優先通行権の認められているときには、直ちに停止することができるような速度にまで減…