裁判官が、任官前、審理の対象となつている条例の立案過程において、当該条例案の合憲性に関する立案当事者の意見照会に対し、当時の法務府法制意見第一局長として純然たる法律解釈に関する意見回答をしたからといつて、事件につき裁判の公正を妨げるおそれがある予断または偏見があるものとすることはできない。
裁判官が任官前審理の対象となつている条例の立案過程において法務府法制意見第一局長として意見回答をしたことと刑訴法二一条一項の「不公平な裁判をする虞」
刑訴法21条1項
判旨
裁判官が過去に行政府の機関として、後に争点となる条例の立案に関し、一般的・抽象的な法律上の見解を表明したとしても、直ちに裁判の公正を妨げる予断や偏見があるとはいえず、忌避事由には当たらない。
問題の所在(論点)
裁判官が過去に行政府の立場で、当該事件の争点となる法令の合憲性について抽象的な法律的見解を表明していたことが、刑事訴訟法21条1項の「不公平な裁判をするおそれがあるとき」に該当するか。
規範
刑事訴訟法21条1項の「不公平な裁判をするおそれがあるとき」とは、裁判官が特定の事件について予断や偏見を持ち、裁判の公正を害する客観的な事情がある場合を指す。行政機関の立場で行った純然たる法律解釈の回答は、一般的・抽象的な法律上の見解の表明にすぎず、特定の具体的事件に関し、当事者の依頼への助言や訴訟手続内での判断を示した場合とは異なり、不公平な裁判をするおそれがあるとは認められない。
重要事実
本件事件の担当裁判官は、過去に法務府法制意見第一局長として、警視総監からの照会に対し、後に本件で問題となった東京都条例(集会・集団行進等に関する条例)の案が合憲である旨の意見回答を行い、文言の修正を提言した。本件被告人は、当該裁判官が条例制定に関与しており、実質的に当事者的立場にあるため、不公平な裁判をするおそれがあるとして忌避を申し立てた。
あてはめ
当該裁判官の過去の回答は、憲法21条と集会の自由に関する一般的・抽象的な法律解釈の表明にとどまる。これは行政府の所轄機関としての立場で行われたものであり、特定の具体的事件について当事者から依頼を受けた助言や、訴訟手続内での判断ではない。したがって、後にその法律解釈に依拠して制定された法令の効力が争点となったとしても、当該裁判官が本件について予断や偏見を有しているとみることはできない。また、法令の立案に関与したことをもって直ちに実質的な当事者と評価することもできない。
結論
本件裁判官に忌避事由は認められないため、申立を却下する。
実務上の射程
裁判官が裁判官就任前に公務員等として法令の解釈や立案に関与していたとしても、それが一般的・抽象的な見解の表明である限り、当該法令を適用する具体的事件における忌避事由にはならない。司法試験においては、職務執行からの除斥(刑訴法20条)や忌避の限界を論じる際の参照判例として活用すべきである。
事件番号: 昭和48(す)329 / 裁判年月日: 昭和48年12月14日 / 結論: 却下
本件申立は、当裁判所の審理手続に対する不服のみを理由とするものであつて、訴訟を遅延させる目的のみでなされたことが明らかである。
事件番号: 昭和47(す)65 / 裁判年月日: 昭和47年6月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】裁判官に対する忌避の申し立てにおいて、不公平な裁判をするおそれがあると認められる客観的な事情が存在しない場合には、当該申し立ては理由がないものとして却下される。 第1 事案の概要:業務上過失傷害被告事件の被告人(申立人)が、担当裁判官らに対して忌避の申し立てを行った。申立人は、別紙記載の事情(具体…