覚せい剤(粉末〇・四三七グラム)を自宅でテレビの上に置いて所持する罪と、覚せい剤原料(粉末〇・七六一二グラム)を自宅で着衣のポケットに入れて所持する罪とは、併合罪の関係にある。
覚せい剤の所持罪と覚せい剤原料の所持罪とが併合罪の関係にあるとされた事例
覚せい剤取締法14条1項,覚せい剤取締法(昭和48年法律114号による改正前のもの)30条の7,覚せい剤取締法(昭和48年法律114号による改正前のもの)41条1項2号,覚せい剤取締法(昭和48年法律114号による改正前のもの)41条の4第1項3号,刑法45条
判旨
覚せい剤と覚せい剤原料を同時に所持していた場合、両罪は別個独立に成立し、刑法45条前段の併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
覚せい剤の所持罪と覚せい剤原料の所持罪が同時に成立する場合、それらの罪数は観念的競合(刑法54条1項前段)となるか、あるいは併合罪(刑法45条前段)となるか。
規範
性質を異にする複数の違法薬物を同一の場所で同時に所持する場合、それぞれの所持行為は別個の構成要件に該当する独立の犯罪を構成し、それらは刑法45条前段の併合罪として処理される。
重要事実
被告人は、その居宅において覚せい剤(第一審判示第二の(一))と、覚せい剤原料(同判示第二の(二))を所持していた。捜査機関が被告人方で捜索を実施した時点において、これら両方の薬物が発見された。
事件番号: 平成12(あ)1345 / 裁判年月日: 平成15年11月4日 / 結論: 棄却
自動車内において覚せい剤を所持した罪と同車内にとび口を隠して携帯した罪とは,覚せい剤がセカンドバッグに入れて持ち歩いていたものであり,とび口が同車内に積み置いていたものであることなど判示の事実関係の下においては,併合罪の関係にある。
あてはめ
覚せい剤取締法が規制する「覚せい剤」と「覚せい剤原料」は、法的に別個の定義がなされ、異なる規制対象となっている。本件において被告人が両者を同時に所持していた事実は認められるものの、それぞれの所持は別個の構成要件を充足する独立した行為と評価できる。したがって、両罪を包括して一罪としたり、観念的競合としたりする理由はなく、別個独立の罪として併合罪の関係に立つと解される。
結論
覚せい剤所持罪と覚せい剤原料所持罪は併合罪となる。
実務上の射程
同一の機会・場所における複数種類の薬物所持の罪数判断に適用される。拳銃と実弾の所持が観念的競合とされる場合(最決昭49.2.14)等と比較し、保護法益や構成要件の性質から罪数を峻別する答案構成に有用である。
事件番号: 昭和53(あ)2288 / 裁判年月日: 昭和54年12月14日 / 結論: 棄却
麻薬の譲受けとその麻薬の譲渡しは、たとえそれが営利の目的で行われたものでも、犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものではなく、右両罪は併合罪の関係にある。
事件番号: 昭和31(あ)4748 / 裁判年月日: 昭和35年3月29日 / 結論: 棄却
昭和三一年一〇日頃譲渡したと認められた覚せい剤一、一〇〇本位および同年四月八日頃所持していたと認められた覚せい剤約二八一本が、同年一月初旬頃密造したと認められた覚せい剤約一、八〇〇本の一部であつたとしても、右譲渡および所持は、その方法態様において密造に当然随伴する行為とは認められないから、所論のように事後の処分行為と認…
事件番号: 昭和55(あ)515 / 裁判年月日: 昭和57年2月17日 / 結論: 棄却
一 幇助罪の個数は、正犯の罪のそれに従つて決定される。 二 幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法五四条一項にいう一個の行為によるものであるか否かは、幇助行為それ自体についてみるべきである。