一 被告人であるアメリカ合衆国軍人等に対する訴訟書類の送達をするには、刑訴法五四条によつて準用される民訴法一六九条その他によるほか、日米合同委員会の合意事項たる「日米行政協定の実施上問題となる事項に関する件」八項Eによるべきである。 二 被告人であるアメリカ合衆国軍属に対する起訴状謄本の送達につき、送達すべき場所の表示を誤つたほか、日本文の起訴状の謄本自体が被告人本人に交付されなかつた瑕疵があつたとしても、横須賀米海軍基地司令部法務部気付で被告人宛とされた右起訴状謄本が同法務部に送付され、米軍当局の慣行に従い、同法務部が職務上これを英文を翻訳したのち、同英訳にかかる起訴状が弁護人選任に関する通知とともに被告人本人に交付されたときは、右送達の瑕疵は、いまだ被告人に対する公訴提起の効力を失わせるものではない。
一 被告人であるアメリカ合衆国軍人等に対する訴訟書類の送達方法 二 被告人であるアメリカ合衆国軍属に対する起訴状謄本の送達の瑕疵と公訴提起の効力
刑訴法54条,刑訴法271条,刑訴法272条,刑訴法339条1項1号,刑訴規則176条,刑訴規則177条,民訴法169条,民訴法削除前の167条,日米行政協定の実施上問題となる事項に関する件8項E
判旨
起訴状謄本の送達に場所の誤りや日本文本体の不交付という瑕疵があっても、英訳により被告人が公訴事実を了知し防御権が害されていないならば、公訴提起の効力は失われない。
問題の所在(論点)
送達場所の誤りおよび日本文起訴状の不交付という送達上の瑕疵がある場合に、公訴提起の効力が否定されるか。
規範
起訴状謄本の送達(刑訴法271条)に手続上の瑕疵があったとしても、被告人が実質的に自己に対する公訴事実の内容および罪名を了知し、かつ弁護人選任等の手続を執る機会が保障されるなど、被告人の防御権の行使が実質的に害されていないと認められる場合には、当該瑕疵は公訴提起そのものの効力を失わしめるものではない。
重要事実
米国軍属である被告人に対し、横須賀米海軍基地司令部宛に起訴状謄本が送達されたが、被告人は実際には別の司令部に所属していたため送達場所に誤りがあった。また、日本語を解さない被告人に対し、日本文の起訴状謄本自体は交付されず、同部員が職務上作成した英訳の起訴状および弁護人選任通知のみが交付された。
あてはめ
本件では、送達場所の誤りはあったものの、米海軍当局の慣行に従い被告人の所属先に回送され、英訳された起訴状等が本人に交付されている。これにより、被告人は公訴事実の内容と罪名を了知し、弁護人選任手続を行うことができた。したがって、送達上の瑕疵はあるものの、被告人の公判期日における防御権の行使が害された事跡は認められず、公訴提起を無効とするほどの重大な瑕疵とはいえない。
結論
本件送達の瑕疵は公訴提起の効力を失わせるものではなく、公訴棄却等の必要はない。上告棄却。
実務上の射程
手続の適正(憲法31条)の観点から、形式的な瑕疵があっても「被告人の防御権の実行可能性」という実質的観点から公訴提起の有効性を判断する枠組みとして活用できる。特に外国人被告人に対する送達や通訳の不備が問題となる事案での基準となる。
事件番号: 昭和30(あ)3137 / 裁判年月日: 昭和33年2月10日 / 結論: 棄却
被告人に送達された起訴状登録に、起訴検察官の氏名が遺脱しているとの一事だけでは、その送達を無効ならしめるものではない。