被告人に送達された起訴状登録に、起訴検察官の氏名が遺脱しているとの一事だけでは、その送達を無効ならしめるものではない。
検察官の氏名の記載のない起訴状謄本の送達とその効力
刑訴法271条,刑訴規則176条,刑訴規則164条,刑訴規則58条
判旨
被告人に送達された起訴状謄本において、検察官の氏名の記載が遺脱されていたとしても、その一事をもって直ちに送達が無効となるわけではない。
問題の所在(論点)
起訴状謄本に検察官の氏名の記載が遺脱されている場合、刑事訴訟法271条1項に基づく送達の効力は否定され、無効となるか。
規範
起訴状謄本の送達(刑事訴訟法271条1項)は、被告人に対し公訴の提起があったことを知らせ、防御の準備をさせることを目的とする。したがって、謄本の一部に記載の不備(形式的瑕疵)があっても、それが直ちに送達の効力を否定し、公訴提起の手続を無効とするものではない。
重要事実
本案の被告人に対し、裁判所から起訴状の謄本が送達された。しかし、当該謄本には起訴を担当した検察官の氏名が記載されておらず、記載が遺脱した状態であった。弁護人は、この氏名記載の欠如を理由に、被告人に対する起訴状謄本の送達は無効であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、送達された起訴状謄本に検察官の氏名の記載が欠けていた事実は認められる。しかし、検察官の氏名記載の有無は、被告人が公訴事実の内容を把握し、自らの防御を準備するという謄本送達の本来の目的を阻害するほどの重大な欠陥とはいえない。したがって、単に起訴検察官の氏名記載が遺脱されているとの一事をもって、被告人に対する当該送達が無効であると解することはできない。
結論
起訴状謄本に検察官の氏名が記載されていなくても、その送達は有効であり、公訴提起の手続に違法はない。
実務上の射程
起訴状の形式的瑕疵に関する射程を示す判例である。起訴状謄本の送達の目的(防御権の付与)を害しない程度の軽微な形式的事項の不備であれば、送達の有効性に影響しないことを判示している。答案上は、起訴状の有効性や送達の適否が問題となった際、瑕疵が防御に実質的な不利益を与えたかという視点で活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)3707 / 裁判年月日: 昭和30年6月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠調べを経ていない証拠を事実認定に用いる違法があっても、他の適法な証拠のみで判示事実を認定できる場合には、その違法は判決に影響を及ぼさない。したがって、かかる違法は控訴理由(及び上告理由)とはならない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起した事案において、弁護人は第一審ないし控訴審の証拠調べ手…
事件番号: 昭和28(あ)5602 / 裁判年月日: 昭和30年10月4日 / 結論: 棄却
判決書に記録すべき検察官の官氏名は、審理または判決言渡のいずれかに出席した検察官の官氏名だればよいのであつて、必ず判決言渡に出席した検察官の官氏名でなければならないと解すべきではない。