原審弁護人でない弁護士名義の控訴申立書のみが控訴提起期間最終日に原裁判所へ差し出された場合、その控訴申立は無権限者のしたものとして不適法であり、その翌日同弁護士を弁護人に選任する旨の届出が追加提出されたとしても、これにより右不適法な控訴申立が適法有効となるものではない。
弁護人選任届の追完が認められなかつた事例
刑訴法385条,刑訴規則18条
判旨
弁護人選任の届出がない者による控訴申立ては不適法であり、控訴期間経過後に弁護人選任の届出がなされたとしても、その瑕疵は治癒されず当該控訴申立てが有効になることはない。
問題の所在(論点)
弁護人選任の届出(刑訴法30条)がない状態で行われた控訴申立ての有効性、および控訴期間経過後に選任届が提出された場合に当該申立てが適法なものとして扱われるか(追認の可否)。
規範
控訴の申立ては、刑事訴訟法に基づき正当な権限を有する者によってなされる必要がある。弁護人による控訴申立て(刑訴法355条)が有効であるためには、申立時において弁護人選任の効力が発生している(同法30条)ことを要し、無権限者による申立ての不備は、控訴期間経過後の追認的届出によっても治癒されない。
重要事実
弁護士が被告人のために控訴を申し立てたが、当該申立て時点では弁護人選任の届出がなされていなかった。控訴を提起できる期間が経過した後に、当該弁護士を弁護人に選任する旨の届出が改めて提出されたが、原決定は、当初の控訴申立てを無権限者による不適法なものと判断した。
事件番号: 昭和47(し)43 / 裁判年月日: 昭和47年9月26日 / 結論: その他
いわゆる必要的弁護事件につき被告人が控訴した場合において、刑訴規則二五〇条により控訴の審判に準用される同規則一七八条三項の規定に違背して被告人に弁護人がないままであるときは、所定の期間内に控訴趣意書を差し出さないことに基づき刑訴法三八六条一項一号により決定で右控訴を棄却することは許されない。
あてはめ
本件において、控訴を申し立てた弁護士は、申立時において適法な弁護人選任の届出を行っていない。刑訴法上の控訴申立権は権限ある者に限定されており、選任届のない状態での申立ては「無権限者のしたもの」と評価せざるを得ない。また、期間経過後に選任届が提出されたとしても、控訴期間という法的安定性を重視すべき期間制限の趣旨に照らせば、遡及的に適法化されるとは解されない。したがって、当該申立ては不適法である。
結論
弁護人選任の届出がない者による控訴申立ては不適法であり、期間経過後の選任届提出によっても有効とはならないため、控訴を棄却した原決定は正当である。
実務上の射程
弁護人の訴訟行為の前提となる選任届の重要性を確認する判例である。答案上は、弁護人の代理権行使の有効性が問題となる場面(控訴申立てや書面提出等)で、選任届という形式的要件の具備が実質的な代理権の有無に優先して判断される根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(し)27 / 裁判年月日: 昭和26年2月9日 / 結論: 棄却
強制弁護の事件につき、裁判所が被告人に対し、弁護人を選任することができること、貧困その他の事由によつて弁護人を選任することができないときは、弁護人の選任を請求することができるとの記載のある弁護人選任に関する通知を出したのに対し、被告人から自分の方で弁護人甲を選任する旨を回答があつた場合には、控訴裁判所は被告人に対し、控…
事件番号: 昭和45(し)5 / 裁判年月日: 昭和45年2月13日 / 結論: 棄却
控訴趣意書差出最終日指定後選任された弁護人に、あらためて最終日の通知をしなかつたことを違法でないとして、控訴棄却の決定に対する異議申立を棄却した原決定は、憲法三二条、一三条に違反しない。
事件番号: 昭和47(し)80 / 裁判年月日: 昭和47年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決の言渡し後に被告人の配偶者によって選任された弁護人は、被告人のために控訴を申し立てる固有の権限を有しない。 第1 事案の概要:第一審判決が言い渡された後、被告人の妻が弁護人を選任した。この新たに選任された弁護人が、被告人のために控訴の申立てを行ったが、原審は当該弁護人には控訴の申立権がな…
事件番号: 昭和30(し)1 / 裁判年月日: 昭和30年10月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の提出最終日を弁護人に通知すべき義務は、当該最終日の指定当時において既に選任されている弁護人に対してのみ認められる。したがって、指定後に選任届が提出された弁護人に対しては、裁判所は改めて最終日の通知を行う必要はない。 第1 事案の概要:被告人は控訴を申し立てたが、裁判所が控訴趣意書の提出…