判決の宣告にあたり、裁判長が主文の刑を懲役一年六月と朗読すべきところを誤つて懲役一年二月と朗読し、次いで理由の要旨を告げ上訴期間等の告知を行ない、席を立ちかけたところ、弁護人から質問があつたので、即座にその場で懲役一年六月と主文の刑を朗読し直した場合には、被告人に対する宣告刑は懲役一年六月としてその効力を生ずる。
判決主文の言直しが有効とされた事例
刑訴法342条,刑訴規則35条
判旨
裁判長が判決主文を誤って朗読した場合であっても、判決の宣告が完了して退廷するまでの間に、即座にその場で誤りを訂正して再度主文を朗読し直したときは、訂正後の内容をもって判決の効力が生じる。
問題の所在(論点)
裁判長が判決主文を誤って朗読した場合において、その直後に訂正の朗読がなされたとき、いずれの内容をもって宣告された判決の効力が発生するか(宣告の効力発生の時期と訂正の可否)。
規範
判決の宣告は、裁判長が主文を朗読し、理由の要旨を告げることによって行われるが(刑訴法342条)、主文の朗読に明白な誤りがあった場合、その宣告手続が完了して裁判官が退廷する前であれば、即座にその場で誤りを訂正して再朗読することにより、正しい判決内容を有効に宣告することができる。
重要事実
第一審裁判長が、被告人に対し懲役1年6月とすべきところ、誤って「懲役1年2月」と主文を朗読した。その後、理由の要旨を告げ、上訴期間等の告知を終えて席を立ちかけた際、弁護人からの質問を受けたことで誤読に気付いた。裁判長は即座にその場で、刑は懲役1年6月である旨を告げ、直ちに正しい主文を朗読し直した。
事件番号: 昭和41(あ)2814 / 裁判年月日: 昭和42年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に事実誤認の瑕疵が含まれる場合であっても、他の証拠により犯罪の成立が十分に認められるときは、判決の結果に影響を及ぼすものではないため、上告趣意とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、約束手形6通を偽造したとして起訴された。原判決は、本件偽造手形6通すべての金額欄が「チェッ…
あてはめ
裁判長は誤読の後、理由説明や権利告知を行い席を立ちかけたが、未だ法廷内に在廷しており宣告手続の一環としてその場に留まっていたといえる。この状況下で、弁護人の指摘を受け「即座にその場」で訂正し、直ちに主文を朗読し直している。このような一連の過程は、実質的に宣告手続が継続している中での適法な訂正と評価できる。したがって、当初の誤読に拘束されることなく、訂正後の朗読内容が判決の効力として確定する。
結論
被告人に対する宣告刑は、訂正後の「懲役1年6月」としてその効力を生じたものと解すべきである。
実務上の射程
判決宣告手続の瑕疵と訂正の限界を示す判例である。裁判官が退廷し宣告手続が完全に終了した後の訂正は許されないが、宣告の場において即時に行われた訂正であれば、被告人の防御権を不当に害するものではなく、有効な宣告と認められる。実務上は、言い間違えによる効力発生の有無を判断する際の重要な基準となる。
事件番号: 昭和45(あ)1058 / 裁判年月日: 昭和45年10月22日 / 結論: 棄却
行使の目的をもつてほしいままに、他人振出名義の約束手形の金額欄の数字を改ざんする行為は、有価証券の変造であつて、偽造ではない。
事件番号: 平成15(あ)537 / 裁判年月日: 平成15年12月18日 / 結論: 棄却
司法書士に対し金銭消費貸借契約証書に基づく公正証書の作成の代理嘱託を依頼するに際して偽造の同契約証書を真正な文書として交付する行為は,刑法161条1項にいう「行使」に当たる。
事件番号: 昭和33(あ)1409 / 裁判年月日: 昭和34年3月12日 / 結論: 棄却
債務者が債権者を欺罔し債務の弁済の猶予を得たときは、刑法第二四六条第二項の詐欺罪が成立する。
事件番号: 昭和25(み)7 / 裁判年月日: 昭和25年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決訂正の申立において、訴訟手続に関する刑事訴訟規則の違憲のみを主張し、判決内容の誤りを主張しない場合は、刑事訴訟法415条1項の申立理由として不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、最高裁判所の判決に対し、刑事訴訟法415条1項に基づき判決訂正の申立を行った。その申立理由は、当裁判所の訴訟手…