一 昭和四六年法律第九八号による改正前の道路交通法三六条二項において、「その通行している道路(優先道路を除く。)の幅員よりもこれと交差する道路の幅員が明らかに広いものであるとき」という場合の道路とは、歩道と車道の区別がある道路においては車道をいう。 二 歩道と車道の区別がなく、その幅員が交差点の東側では約七・九メートル、西側では約五・八メートルであるほぼ東西に通じる道路(以下、東西道路という。)と、歩道と車道の区別があり、車道の幅員が約九メートル、その両側にある歩道の幅員がそれぞれ約四・五メートルであるほぼ南北に通じる道路(以下、南北道路という。)とが十字型に交わる交差点においては、東西道路の交差点東側の幅員と南北道路の車道の幅員との差は約一・一メートルにすぎず、東西道路の幅員よりもこれと交差する南北道路の幅員が明らかに広いものとは認められない。
一 歩車道の区別がある場合における道路交通法三六条二項(昭和四六年法律第九八号による改正前のもの)の「道路」の意義 二 歩車道の区別のある道路とその区別のない道路とを比較して道路交通法三六条二項(昭和四六年法律第九八号による改正前のもの)にいう「道路の幅員が明らかに広い」場合にあたらないとされた事例
道路交通法(昭和46年法律98号による改正前のもの)36条2項,道路交通法(昭和46年法律98号による改正前のもの)17条3項
判旨
道路交通法36条2項にいう「道路の幅員」とは、歩道と車道の区別がある道路においては車道の幅員を指すと解すべきである。したがって、交差する道路の一方にのみ歩道がある場合でも、車道部分の幅員を比較して「明らかに広い」か否かを判断する。
問題の所在(論点)
道路交通法36条2項の優先関係を決定する「道路の幅員」の比較において、歩道と車道の区別がある道路の場合、歩道部分を含めた道路全体の幅員を基準とすべきか、それとも車道部分のみの幅員を基準とすべきか。
規範
道路交通法36条2項(改正前)における「その通行している道路の幅員よりもこれと交差する道路の幅員が明らかに広いものであるとき」の判断基準となる「道路」とは、歩道と車道の区別がある道路においては、車道をいう(同法17条3項参照)。
重要事実
被告人が南北道路を、被害者が東西道路を走行し、十字型交差点で衝突した。南北道路には歩道と車道の区別があり、車道幅員は約9メートル、両側の歩道幅員は各約4.5メートル(計18メートル)であった。これに対し、東西道路には歩道と車道の区別がなく、幅員は約5.8メートルから7.9メートルであった。被告人側は、南北道路の歩道を含む全幅員(18メートル)を基準に、東西道路より「明らかに広い」と主張した。
あてはめ
本件南北道路は歩車道の区別があるため、基準となる幅員は車道部分の約9メートルである。これに対し、東西道路の交差点東側の幅員は約7.9メートルである。両者の差は約1.1メートルにすぎず、一方が他方に対して「明らかに広い」ものとは認められない。歩道を含めた全幅員(18メートル)を基準とする被告人の主張は、法17条3項の趣旨に照らし採用できない。
結論
歩道と車道の区別がある道路の幅員は「車道」の幅員を指す。本件では一方の道路が明らかに広いとはいえないため、南北道路を通行していた被告人に優先権は認められない。
実務上の射程
交差点における徐行義務や優先関係が問題となる事案で、広狭の判断基準を画する射程を持つ。答案上は、過失運転致死傷罪等の過失の有無を検討する際、道路交通法上の優先関係を確定させるための前提論理として、歩道を除外した車道幅員で比較すべきことを明示するのに用いる。
事件番号: 昭和43(あ)2121 / 裁判年月日: 昭和44年12月5日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】交通整理の行われていない見通しの悪い交差点であっても、優先道路である場合や交差道路に比して明らかに幅員が広い場合には、道路交通法42条による徐行義務は免除される。 第1 事案の概要:被告人は、交通整理が行われていない交差点に進入した際、左方の見通しが不良であったが徐行しなかった。被告人の進行してい…
事件番号: 昭和62(あ)644 / 裁判年月日: 昭和63年4月28日 / 結論: 棄却
車両等が道路交通法四二条一号にいう「左右の見とおしがきかない交差点」に入ろうとする場合には、右車両等の進行している道路がそれと交差する道路に比して幅員が明らかに広いときであつても、徐行義務は免除されない。