道路交通法三六条二項にいう「道路の幅員が明らかに広いもの」とは、交差点の入口から、交差点の入口で徐行状態になるために必要な制動距離だけ手前の地点において、自動車を運転中の通常の自動車運転者が、その判断により、道路の幅員が客観的にかなり広いと一見して見分けられるものをいう。
道路交通法三六条二項にいう「道路の幅員が明らかに広いもの」の意義
道路交通法36条,道路交通法42条
判旨
道路交通法36条2項にいう「道路の幅員が明らかに広いもの」とは、通常の運転者が、交差点手前の制動距離を考慮した地点において、道路の幅員が客観的にかなり広いと一見して見分けられるものを指す。
問題の所在(論点)
道路交通法36条2項における、交差道路の一方の幅員が「明らかに広い」か否かを判断する基準(判断時期・判断主体・判断態様)。
規範
道路交通法36条2項にいう「道路の幅員が明らかに広いもの」とは、交差点の入口において徐行状態になるために必要な制動距離だけ手前の地点において、通常の自動車運転者が、その判断により、道路の幅員が客観的にかなり広いと一見して見分けられるものをいう。
重要事実
被告人が自動車を運転し交差点に進入しようとした際、交差する道路との幅員差について争いが生じた。弁護人は、被告人の進路の方が明らかに広いと主張し、優先道路としての判断や徐行義務の有無が争点となった。なお、具体的な道路のメートル数などの事実は本判決文からは不明である。
事件番号: 昭和62(あ)644 / 裁判年月日: 昭和63年4月28日 / 結論: 棄却
車両等が道路交通法四二条一号にいう「左右の見とおしがきかない交差点」に入ろうとする場合には、右車両等の進行している道路がそれと交差する道路に比して幅員が明らかに広いときであつても、徐行義務は免除されない。
あてはめ
本件において、道路の広さを判断すべき基準時は、単に交差点の入口に達した時ではなく、安全に徐行へ移るための制動距離を手前に確保した地点とされる。また、その判断は特定の運転者の主観ではなく、通常の運転者を基準とした客観的かつ一見して明白な識別可能性を要する。本件では、被告人の進路が客観的にかなり広いと一見して見分けられる状態であったとは認められず、広幅員道路による優先権は否定される。
結論
被告人の進路が「道路の幅員が明らかに広い」ものには当たらないとした原判断に法令違反はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
優先道路の該非や交差点における注意義務(徐行義務)の発生基準を判断する際のリーディングケースである。「一見して見分けられる」という厳格な基準を示しており、実務上、微差の幅員差では優先権を認めない傾向にある。交通事故の過失相殺や、過失運転致死傷罪における予見可能性・回避可能性の検討において、運転者の視点から見た客観的な判断枠組みとして活用される。
事件番号: 昭和42(あ)2885 / 裁判年月日: 昭和43年11月15日 / 結論: 破棄差戻
車両等が、道路交通法第四二条にいう「交通整理の行なわれていない交差点で左右の見とうしのきかないもの」に進入しようとする場合において、その進路が同法第三六条により優先道路の指定を受けているとき、またはその幅員が明らかに広いため、同条により優先通行権の認められているときには、直ちに停止することができるような速度(同法第二条…