裁判官が裁判所の庁舎外で勾留質問を行なつても、憲法三二条に違反しない。
裁判所の庁舎外における勾留質問と憲法三二条
憲法32条,刑訴法61条,刑訴法207条
判旨
憲法32条は裁判所による裁判を受ける権利を保障するものであり、裁判を行う場所についてまで規定したものではないため、裁判所の庁舎外で勾留質問を行うことは同条に反しない。
問題の所在(論点)
裁判官が裁判所の庁舎外において勾留質問を行うことが、憲法32条(裁判を受ける権利)に違反するか。
規範
憲法32条の保障は、国民が憲法または法律に定められた裁判所によって裁判を受ける権利を有し、裁判所以外の機関によって裁判をされないことを保障する趣旨である。したがって、手続を行う機関が適法に組織された裁判所である限り、裁判を行う具体的な場所については同条の関知するところではない。
重要事実
松江地方裁判所の裁判官が、裁判所の庁舎外において被告人(または被疑者)に対し勾留質問を実施した。これに対し、庁舎外での勾留質問は憲法32条に違反するのではないかが争点となり、抗告がなされた。
あてはめ
事件番号: 令和6(し)262 / 裁判年月日: 令和6年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留の際の被疑事件告知において、個人特定事項を秘匿する方法(刑訴法207条の2第2項)によったとしても、他の事項から事件を特定可能であれば、憲法34条に違反しない。 第1 事案の概要:被疑者を勾留するに当たり、裁判官が刑訴法207条の2第2項の規定を適用し、被害者等の個人特定事項を伏せた状態で被疑…
本件における勾留質問は、憲法および法律に定められた裁判所である松江地方裁判所の裁判官によって行われている。憲法32条は裁判を行う場所までを限定するものではないから、庁舎外という場所的状況は、適法な裁判所による裁判の保障を損なうものではないと解される。
結論
適法に組織された裁判所による手続である以上、庁舎外での勾留質問は憲法32条に違反しない。
実務上の射程
裁判の場所的要件に関する憲法適合性を判断した射程の短い判例であるが、勾留質問などの裁判官の職務執行の場所的限界が問われた際の憲法適合性判断の基礎として活用できる。
事件番号: 昭和54(し)90 / 裁判年月日: 昭和54年9月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所の発する書類の送達に関する方法、要件、効果の定めは、憲法32条が保障する裁判を受ける権利の具体化として、専ら立法政策に委ねられた事項である。 第1 事案の概要:刑事手続において、裁判所の発する書類の送達がなされたが、抗告人は刑訴法54条により準用される民訴法173条(当時の規定。現行の郵便送…
事件番号: 平成7(し)40 / 裁判年月日: 平成7年4月12日 / 結論: 棄却
一 勾留に関する処分を行う裁判官は職権により被疑者又は被告人の勾留場所を変更する旨の移監命令を発することができる。 二 裁判官に移監命令の職権発動を促す趣旨でされた勾留取消し請求を却下した裁判に対する不服申立ては許されない。
事件番号: 昭和42(し)26 / 裁判年月日: 昭和42年8月31日 / 結論: 棄却
甲被疑事実による勾留を利用して乙被疑事実につき取り調べた後、いつたん釈放し直ちに乙被疑事実により逮捕勾留した場合において、乙事実について公訴が提起され、その後も勾留理由があるときは、起訴前の段階における右のような勾留およびその勾留中の捜査官の取調べの当否は、起訴後における勾留の効力に影響を及ぼさない。
事件番号: 昭和62(し)61 / 裁判年月日: 昭和62年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】準抗告事件の決定を早急に行うよう求める特別抗告は、刑事訴訟法上の不服申立理由を欠くため認められない。 第1 事案の概要:岡山地方裁判所において係属中の勾留の裁判に対する準抗告事件について、申立人が「準抗告事件の決定を早急にせよ」との趣旨の裁判を求めて最高裁判所に特別抗告を申し立てた事案。 第2 問…