他人にダイナマイトの時限爆発装置を携行させて飛行機に搭乗させ、飛行機もろとも爆破して同人を殺害する目的をもつて、ダイナマイト、タイマー、バツテリー等を携行して空港ロビーの便所にはいり、右タイマーにバツテリー、ダイナマイトを連結するなどして時限爆発装置完成のための操作をしているうち、その完成直前誤つてバツテリーの電流をダイナマイトに装置した導火線に通じさせた結果ダイナマイトが爆発し、官に発覚したときは、爆発物取締罰則二条の罪が成立する。
爆発物取締罰則二条の罪が成立するとされた事例
爆発物取締罰則1条,爆発物取締罰則2条,爆発物取締罰則3条
判旨
爆破目的でダイナマイト、タイマー、バッテリー等を携行して空港の便所に入り、装置を組み立てる操作を行って完成直前の段階に至った場合は、爆発物取締罰則2条の罪が成立する。
問題の所在(論点)
爆発物取締罰則2条(爆発物使用の着手)の成否に関し、時限爆破装置を組み立てる操作がどの程度の段階に至れば同条の罪が成立するか。
規範
爆発物取締罰則2条にいう「使用」の着手が認められるためには、爆発物を爆破させる目的をもって、装置を完成させるための具体的な操作を開始し、爆破に至る客観的危険性を生じさせる行為が行われることを要する。
重要事実
被告人は、他人にダイナマイトの時限爆発装置を携行させて飛行機に搭乗させ、飛行機ごと爆破して同人を殺害する目的を有していた。被告人は、ダイナマイト、タイマー、バッテリー等を携行して空港ロビーの便所に立ち入り、タイマーにバッテリーやダイナマイトを連結するなどして、時限爆発装置完成のための操作を行っていた。その完成直前、操作ミスにより誤って電流が導火線に通じた結果、ダイナマイトが爆発し、犯行が発覚した。
事件番号: 昭和41(あ)415 / 裁判年月日: 昭和42年2月23日 / 結論: 棄却
爆発物取締罰則第一条にいう爆発物の使用とは、一般的に治安を妨げ、または犯人以外の人の身体もしくは財産を害するおそれのある状況の下において、爆発物を爆発すべき状態に置けば足り、犯人の具体的目標とする人の身体もしくは財産を害する状況の下に置くことを要するものではない。
あてはめ
被告人は飛行機爆破という殺害目的を遂げるため、具体的な爆破器具を現場に持ち込み、装置の組み立てという実行に密着した行為を開始している。特に、タイマー、バッテリー、ダイナマイトを連結する操作は、装置を完成させて爆発可能な状態にするための核心的な工程である。本件では、装置の完成直前という、爆発の具体的危険が極めて高い段階まで操作が進んでいたといえる。したがって、この段階で爆発物取締罰則2条の罪(使用の実行の着手)が認められると解するのが相当である。
結論
時限爆発装置完成のための操作を継続し、その完成直前の段階に至ったときは、爆発物取締罰則2条の罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、爆発物取締罰則2条の実行の着手時期について示しており、装置の組み立てという準備段階を超えた具体的操作の開始を重視している。予備罪と実行の着手の境界を判断する際の指標となる。答案上は、爆発物の「使用」の意義を検討する際、単なる所持ではなく、具体的な爆破目的を伴う操作の開始をもって着手を認める論拠として活用できる。
事件番号: 昭和62(あ)196 / 裁判年月日: 平成3年2月1日 / 結論: 棄却
爆発物取締罰則一条及び三条の「人ノ身体ヲ害セントスルノ目的」があるというためには、人の身体を害するという結果の発生を未必的に認識し、認容することをもって足り、右結果の発生に対する確定的な認識又は意図は要しない。
事件番号: 昭和63(あ)682 / 裁判年月日: 平成6年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】極めて凶悪な無差別大量殺人事件において、その犯行態様の悪質さや結果の重大性を鑑みれば、死刑の選択は正当として是認される。 第1 事案の概要:被告人は他の者と共謀の上、無差別大量殺人を企図し、手製の時限爆弾を周到に準備した。これを北海道庁庁舎内に仕掛けて爆発させ、その結果、2名の生命を奪い、81名に…
事件番号: 昭和53(あ)1760 / 裁判年月日: 昭和55年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は現行憲法施行後も法律としての効力を有し、「治安ヲ妨ケ」等の概念もあいまいで不明確とはいえず、憲法19条、31条、36条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、爆発物取締罰則違反の罪で起訴された。これに対し被告人側は、同罰則が法律としての効力を欠くこと、また「治安ヲ妨ケ」等の…
事件番号: 昭和29(あ)599 / 裁判年月日: 昭和34年8月28日 / 結論: 棄却
本件の時限爆弾と称するもの(判文参照)は、爆発物取締罰則にいわゆる爆発物にあたらない。