爆発物取締罰則第一条にいう爆発物の使用とは、一般的に治安を妨げ、または犯人以外の人の身体もしくは財産を害するおそれのある状況の下において、爆発物を爆発すべき状態に置けば足り、犯人の具体的目標とする人の身体もしくは財産を害する状況の下に置くことを要するものではない。
爆発物取締罰則第一条にいう爆発物の使用の意義
爆発物取締罰則1条,爆発物取締罰則2条,爆発物取締罰則3条
判旨
爆発物取締罰則1条にいう爆発物の「使用」とは、一般的に治安を妨げ、または犯人以外の人の身体もしくは財産を害するおそれのある状況下において、爆発物を爆発すべき状態に置けば足りる。犯人が具体的に目標とした特定の対象を害する状況下に置くことまでを要するものではない。
問題の所在(論点)
爆発物取締罰則1条の「使用」の意義。特に、目的犯としての性質から、犯人が具体的に目標とした加害対象を害するおそれのある状況下で爆発させる状態に置く必要があるか、それとも一般的・客観的な危険性があれば足りるか。
規範
爆発物取締罰則1条の「使用」とは、必ずしも犯人が具体的な加害目標とした対象(特定の身体・財産)を現に害する状況下に置くことを要しない。一般的に治安を妨げ、または犯人以外の者の身体・財産を害するおそれのある状況下において、爆発物を爆発すべき状態に置く(点火等により爆発の蓋然性を生じさせる)ことをもって足りる。
重要事実
被告人らは、対立する暴力団事務所を爆破・殺傷する目的で、導火線付きダイナマイトを積んだ車で事務所付近に赴いた。事務所付近から点火を開始したが、着火が遅れ、実際に導火線が燃焼を開始したときには事務所を通り過ぎていた。その後、焦った被告人が一般客のいるバス停付近から離れた空地に投げ込もうとした際、車内で爆発し、被告人自らが負傷した。弁護人は、目標とした事務所を害する状況下での爆発ではないため「使用」に当たらないと主張した。
あてはめ
被告人らは殺傷・損壊の目的をもってダイナマイトの導火線に点火しており、その時点で爆発物は「爆発すべき状態」に置かれたといえる。点火が完了した地点において、本来の目標である事務所を爆破し得る可能性が存在していただけでなく、不特定多数の通行人や待合客がいる市街地において爆発の危険を現出させた。このような客観的に治安を妨げ他者の身体・財産を害するおそれのある状況下で爆発の蓋然性を生じさせた以上、たとえ最終的な爆発が目標から逸れた地点であったとしても、同条の「使用」に該当すると評価できる。
結論
被告人らの行為は爆発物取締罰則1条の「使用」に該当する。
実務上の射程
本罪が公共の安全を保護法益とする危険犯・目的犯であることを強調する。具体的目標への命中や、目標に対する直接的危険の発生は不要であり、社会一般に対する客観的危険性が生じた時点で既遂となることを示す際に用いる。答案上は、予備・未遂(2条)との区別において、爆発すべき状態(点火等)の有無と客観的状況を重視して論述する。
事件番号: 昭和44(あ)1289 / 裁判年月日: 昭和45年6月1日 / 結論: 棄却
他人にダイナマイトの時限爆発装置を携行させて飛行機に搭乗させ、飛行機もろとも爆破して同人を殺害する目的をもつて、ダイナマイト、タイマー、バツテリー等を携行して空港ロビーの便所にはいり、右タイマーにバツテリー、ダイナマイトを連結するなどして時限爆発装置完成のための操作をしているうち、その完成直前誤つてバツテリーの電流をダ…
事件番号: 昭和62(あ)196 / 裁判年月日: 平成3年2月1日 / 結論: 棄却
爆発物取締罰則一条及び三条の「人ノ身体ヲ害セントスルノ目的」があるというためには、人の身体を害するという結果の発生を未必的に認識し、認容することをもって足り、右結果の発生に対する確定的な認識又は意図は要しない。
事件番号: 昭和63(あ)682 / 裁判年月日: 平成6年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】極めて凶悪な無差別大量殺人事件において、その犯行態様の悪質さや結果の重大性を鑑みれば、死刑の選択は正当として是認される。 第1 事案の概要:被告人は他の者と共謀の上、無差別大量殺人を企図し、手製の時限爆弾を周到に準備した。これを北海道庁庁舎内に仕掛けて爆発させ、その結果、2名の生命を奪い、81名に…