爆発物取締罰則一条及び三条の「人ノ身体ヲ害セントスルノ目的」があるというためには、人の身体を害するという結果の発生を未必的に認識し、認容することをもって足り、右結果の発生に対する確定的な認識又は意図は要しない。
爆発物取締罰則一条及び三条の「人ノ身体ヲ害セントスルノ目的」の意義
爆発物取締罰則1条,爆発物取締罰則3条
判旨
爆発物取締罰則1条及び3条に規定される「人ノ身体ヲ害セントスルノ目的」は、人の身体を害する結果発生を未必的に認識・認容していれば足り、確定的な認識や意図までは不要である。
問題の所在(論点)
爆発物取締罰則1条および3条に規定される目的犯の要素である「人ノ身体ヲ害セントスルノ目的」の内容について、確定的な認識・意図が必要か、あるいは未必的な認識・認容で足りるか。
規範
爆発物取締罰則1条及び3条所定の「人ノ身体ヲ害セントスルノ目的」があるというためには、爆発物の使用により人の身体を害するという結果が発生することを未必的に認識し、これを認容することをもって足りる。結果発生に対する確定的な認識や、それを積極的に希望する意図までは必要としない。
重要事実
被告人は、爆発物取締罰則違反等の罪に問われた。争点となったのは、同罰則1条(爆発物使用)および3条(使用を目的とした爆発物の所持等)の主観的構成要件である「人ノ身体ヲ害セントスルノ目的」の意義である。原審は未必的な認識・認容で足りると判断したが、被告人側はこれを不服として上告した。
事件番号: 昭和41(あ)415 / 裁判年月日: 昭和42年2月23日 / 結論: 棄却
爆発物取締罰則第一条にいう爆発物の使用とは、一般的に治安を妨げ、または犯人以外の人の身体もしくは財産を害するおそれのある状況の下において、爆発物を爆発すべき状態に置けば足り、犯人の具体的目標とする人の身体もしくは財産を害する状況の下に置くことを要するものではない。
あてはめ
爆発物という殺傷能力の高い危険物を用いる犯罪の性質に鑑みれば、あえて爆発を行わせるに際して、それにより他人の身体に被害が及ぶ可能性を認識しながら、あえてその結果を容認して行為に及んだのであれば、同罰則が処罰の対象とする主観的悪性は備わっているといえる。したがって、確定的な殺傷意図がなくとも、未必的な認識・認容があれば「目的」があるものと評価される。
結論
本件における未必的な認識・認容を前提とした原審の目的の認定は正当であり、爆発物取締罰則1条および3条の「目的」が認められる。
実務上の射程
爆発物取締罰則における「目的」の解釈を明確にした重要判例である。刑法上の「目的犯」一般において、未必的な認識で足りるか否かの議論(例えば通貨偽造罪等)の参照点となるが、基本的には爆発物の危険性に即した判断として位置づけるべきである。答案上では、被告人が被害発生を予見しつつあえて行為に及んだ事実(未必の故意に相当する事実)を摘示し、本規範に当てはめることで「目的」の充足性を論じることになる。
事件番号: 昭和57(あ)1761 / 裁判年月日: 昭和62年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則の合憲性、死刑制度の残虐刑該当性、および被告人の訴訟態度等を量刑事情として考慮することの正当性を認めた。 第1 事案の概要:被告人らは、連続企業爆破事件等に関与し、爆発物取締罰則違反や殺人等の罪に問われた。一審および二審において被告人C・Dには死刑、被告人Aには無期懲役が言い渡された…
事件番号: 平成19(あ)398 / 裁判年月日: 平成19年10月16日 / 結論: 棄却
1 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」というのは,反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らしてその疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には有罪認定を可能とする趣…
事件番号: 昭和63(あ)682 / 裁判年月日: 平成6年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】極めて凶悪な無差別大量殺人事件において、その犯行態様の悪質さや結果の重大性を鑑みれば、死刑の選択は正当として是認される。 第1 事案の概要:被告人は他の者と共謀の上、無差別大量殺人を企図し、手製の時限爆弾を周到に準備した。これを北海道庁庁舎内に仕掛けて爆発させ、その結果、2名の生命を奪い、81名に…