入場税法三条に経営者または主催者とあるのは、いずれも実質的にその責任において経営または主催する者をいい、単なる名義人にすぎない者は、これにあたらない。
入場税法三条にいう経営者または主催者の意義
入場税法3条,入場税法28条
判旨
行政刑法における両罰規定の適用対象となる「経営者」とは、実質的にその責任において事業を経営する者を指し、単なる名義人にすぎない者はこれに含まれない。また、両罰規定による事業主に対する公訴時効は、当該事業主に科される法定刑を基準に判断される。
問題の所在(論点)
行政刑罰の両罰規定における「事業主」として処罰される対象は、登記や届出上の名義人に限られるのか、それとも実質的な経営判断を行う者に限られるのか。また、名義人と実質的経営者が異なる場合にどちらを被告人とすべきか。
規範
入場税法(昭和37年改正前)28条等の両罰規定において、処罰対象となる「経営者または主催者」とは、名義の如何にかかわらず、実質的にその責任において経営または主催する者をいう。したがって、単なる名義人にすぎない者は、同条の業務主として処罰の対象とはならない。
重要事実
被告人は映画館の経営名義人であったが、実際には病弱であったため、実姉であるEが事業経営の実権を掌握し、収益もEに帰属していた。被告人の雇用人であったCらは、Eの指示に基づき、被告人が関知しないところで入場料の一部を隠匿し、入場税を免れた。原審は、被告人が単なる名義人であっても両罰規定の適用があるとして有罪とした。
あてはめ
入場税法3条は経営者を入税義務者としているが、これは実質的な責任主体を捕捉する趣旨と解される。本件において、被告人は名義人ではあるものの、経営の実権はEが握り、利益もEに帰属しており、被告人は業務を具体的に把握・監督できる立場になかった可能性がある。このような「単なる名義人」を業務主として処罰することは、両罰規定の趣旨に反する。裁判所は、誰が実質的にその責任において経営する者であったかを確定すべきである。
結論
被告人が実質的経営者であるか否かを確定せずに有罪とした原判決には法令解釈の誤りがある。また、一部の罪については、事業主の罰金刑に対応する3年の公訴時効が完成しているため、免訴を言い渡すべきである。
実務上の射程
法人処罰や事業主処罰が問題となる事案全般において、「名義と実態の乖離」がある場合に、実質主義をとるべき根拠として引用できる。また、両罰規定の公訴時効が、行為者の時効とは別に、事業主に適用される法定刑を基準に独自に進行することを示す際にも有用である。
事件番号: 昭和26(れ)1452 / 裁判年月日: 昭和32年11月27日 / 結論: 棄却
一 地方税法(昭和二三年法律第一一〇号)第一五一条第三項の「入場税法の廃止前になした行為に関する罰則の適用については、なお、従前の例による」との規定は、従前の行為に関する限り、旧入場税法(昭和二二年法律第一四二号による改正前のもの)の刑罰規定については何等変更なきことを規定したものと解すべきである。 二 同種の犯行につ…