一 暴力行為等処罰に関する法律一条の三所定の罪についても刑法の累犯加重の規定の適用がある。 二 ある前科の存在をもつて常習的暴行等の罪(暴力行為等処罰に関する法律一条の三)の要件たる常習性を認定する一資料とした場合において、その前科と右常習的暴行等の罪とが刑法上の累犯の関係にあるときは、右常習的暴行等の罪につき累犯加重をても、憲法三九条後段に反するものではない。
一 暴力行為等処罰に関する法律一条の三所定の罪と累犯加重 二 ある前科の存在をもつて常習的暴行等の罪(暴力行為等処罰に関する法律一条の三)の要件たる常習性を認定する一資料としたうえその前科と右常習的暴行等の罪とが刑法上の累犯の関係にあることを理由に右常習的暴行等の罪につき累犯加重をすることと憲法三九条後段
暴力行為等処罰に関する法律1条ノ3,憲法39条後段,刑法8条,刑法56条
判旨
暴力行為等処罰に関する法律の常習的暴行等の罪において、前科を常習性認定の資料とした上で、さらに当該前科に基づき累犯加重を行うことは、憲法39条後段の二重処罰禁止に反しない。
問題の所在(論点)
暴力行為等処罰に関する法律1条の3(常習的暴行等)の要件たる「常習性」の認定に前科を利用した上で、さらにその前科に基づき刑法56条により累犯加重をすることが、一の犯罪について重ねて処罰することを禁じた憲法39条後段に違反するか。
規範
憲法39条後段は、確定判決がある犯罪について重ねて処罰することを禁じる趣旨である。常習累犯窃盗罪等の特別罪の構成要件として前科を常習性の認定資料とすること、および刑法56条等の累犯規定により刑を加重することは、いずれも「新たに犯した罪」に対する評価や法定刑の加重を定めたものにすぎず、前犯に対する確定判決を動かしたり、前犯自体を重ねて処罰したりするものではない。
重要事実
事件番号: 昭和57(あ)554 / 裁判年月日: 昭和57年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑の際に被告人の前科を悪性格の証左として参酌することは、前科に係る犯罪について重ねて刑事責任を問うものではないため、憲法39条後段の二重処罰の禁止には抵触しない。 第1 事案の概要:被告人の刑事裁判において、裁判所が量刑の判断(量刑不当の控訴趣意に対する判断)に際し、被告人の前科について判示した…
被告人が、暴行等の前科があるにもかかわらず、新たに暴行等の罪を犯した。裁判所は、暴力行為等処罰に関する法律1条の3に基づき、過去の前科を被告人の「常習性」を認定するための資料として用いた。その上で、当該前科が刑法56条所定の累犯加重の要件を満たすとして、常習的暴行等の罪の刑をさらに累犯加重した。これに対し、被告人側は一つの前科を二重に評価して処罰するものであり憲法39条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
暴力行為等処罰に関する法律1条の3は、暴行等の習癖がある者が新たに犯した罪につき、通常の罪よりも重い法定刑を課す特別罪を構成する規定である。前科を常習性認定の資料とすることは、新罪の性質を決定するための評価にすぎない。また、刑法56条等の累犯加重も、累犯者であるという事由に基づき新罪の法定刑を加重するにすぎず、前犯に対する確定判決を動かすものではない。したがって、常習性の認定と累犯加重の両方に同一の前科を用いたとしても、それは新罪に対する刑罰の程度の決定プロセスにすぎず、前犯を二重に処罰したことにはならないといえる。
結論
本件のような評価は、前犯に対し重ねて刑罰を科するものではないため、憲法39条後段に違反しない。累犯加重をなすことは当然である。
実務上の射程
刑事法における「二重処罰」の意義を限定的に解釈する際の中核的判例である。答案上は、常習犯規定や累犯規定が「過去の犯罪そのもの」ではなく「現在の犯罪の情状や危険性」を処罰対象としていることを説明する根拠として用いる。
事件番号: 昭和45(あ)2212 / 裁判年月日: 昭和46年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法56条及び57条に規定される累犯加重の制度は、憲法13条の個人の尊重及び憲法36条の拷問・残虐な刑罰の禁止の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、前科がある状態でさらに罪を犯し、累犯として刑法56条、57条の適用を受けた。これに対し弁護人らは、累犯加重が憲法13条、31条、36条、3…
事件番号: 昭和42(あ)2625 / 裁判年月日: 昭和43年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】前科を量刑上の判断材料として参酌することは、同一の犯罪事実について重ねて刑事上の責任を問うものではないため、憲法39条後段の二重処罰の禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、裁判所が被告人の前科を量刑上の情状として参酌した。これに対し、弁護人は、判決謄本…