外国為替及び外国貿易管理法第七三条のいわゆる両罰規定における事業主としての法人または人に対する事件は、簡易裁判所の専属管轄に属するものと解すべきである。
外国為替及び外国貿易管理法第七三条のいわゆる両罰規定における事業主としての法人または人に対する事件の事物管轄
外国為替及び外国貿易管理法73条,裁判所法33条1項2号
判旨
両罰規定により罰金刑のみを科される法人等の事件は、関連事件の管轄を生ずる場合を除き、簡易裁判所の専属管轄に属する。もっとも、管轄違いの判断を誤り破棄自判した原判決が、諸般の事情に照らし正義に反するとまではいえない場合には、上告棄却を維持できる。
問題の所在(論点)
両罰規定に基づき罰金刑を科される法人事件の管轄権の所在、および第一審地方裁判所・控訴審高等裁判所が管轄権の有無を誤って自判した場合の処理。裁判所法33条1項2号の適用の可否が問題となる。
規範
1. 外国為替及び外国貿易管理法73条(両罰規定)により罰金刑を科される事業主たる法人の責任は、行為者の刑事責任とは別個の刑事責任であり、その法定刑は罰金刑である。 2. したがって、行為者が共に起訴されて関連事件の管轄(刑訴法9条1項2号、3条1項)が生じる場合を除き、法人に対する事件は、裁判所法33条1項2号により、簡易裁判所の専属管轄に属する。 3. 管轄の解釈適用を誤った違法がある場合でも、事案の内容や審理経過、宣告刑の妥当性に照らし、破棄しなければ著しく正義に反すると認められないときは、上告を棄却できる。
重要事実
被告会社は、従業員の違反行為に基づき、外国為替及び外国貿易管理法73条の両罰規定により起訴された。本件では、違反行為者本人は共に起訴されていなかった。第一審(地方裁判所)は有罪判決を下したが、控訴審は第一審判決を破棄して自ら判決(自判)した。しかし、本件は法定刑が罰金刑のみであり、関連事件の管轄も生じていない事案であった。
事件番号: 昭和37(あ)1250 / 裁判年月日: 昭和40年9月21日 / 結論: 棄却
所論は、本件適用法令たる外国為替及び外国貿易管理法(以下、単に法という。)第二七条第一項第三号前後の憲法第一三条第二九条第一項違反を主張する。しかし、右規定が国民の経済活動、ひいて財産権の行使に対しある程度の制限を加えているものであることは疑いがないけれども、右制限は、法第一条の掲げる諸目的に照らし、これを阻害する事態…
あてはめ
本件被告会社に適用される罰条の法定刑は罰金刑であり、かつ行為者が併せて起訴されていないため、関連事件としての管轄も認められない。そうである以上、本件は簡易裁判所の専属管轄に属する。したがって、地方裁判所に管轄権があることを前提に、管轄簡易裁判所に移送せず自判した原判決には法令解釈の誤りがある。しかし、控訴審での審理経過や宣告刑が不当でないことを考慮すると、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまではいえない(刑訴法411条等の趣旨)。
結論
被告会社に対する事件は簡易裁判所の専属管轄に属するため、原判決には管轄に関する法令違反があるが、著しく正義に反するとは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
法人処罰の管轄を決定する際の基準を示す。行為者が併せて起訴されない「単独の両罰被告」の場合、法定刑が罰金のみであれば簡裁専属管轄となる点に注意を要する。実務上、管轄違いの瑕疵があっても、正義に反しない限り判決が維持される救済法理の適用例としても参照される。
事件番号: 昭和38(あ)1801 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
一 外国為替及び外国貿易管理法第七三条は、事業主たる法人の代表者でない従業者の違反行為につき、当該法人に右行為者の選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定した規定と解すべく、事業主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、事業主もまた刑責を免れないとする法意である…
事件番号: 昭和39(あ)2728 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 棄却
非居住者に対して、いわゆる「預り円」を支払うことは、外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第二号前段の規制の対象となる。
事件番号: 昭和39(あ)1295 / 裁判年月日: 昭和40年11月26日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法二七条第一項第三号違反の罪と同法第四八条第一項に基づく命令に違反する罪とは、牽連犯ではない。
事件番号: 昭和36(あ)1186 / 裁判年月日: 昭和37年7月13日 / 結論: その他
外国為替及び外国貿易管理法第二六条により非居住者に対する債権を取り立てる場合、標準決済方法によることは、同条の要求するところではなく、外国為替管理例第一〇条第一項が標準決済方法によるべきことを定めているのは、同法第二六条の委任によらないもので、罰則を伴う義務を定めたものではない。