一、大学の許可した学生集会であつても、真に学問的研究またはその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動にあたる行為をする場合には、大学の有する特別の自由と自治を享有するものではない。 二、併合罪の関係にある甲乙二個の公訴事実のうち甲についてはその一部の事実を認めながら正当行為とし、乙についてはその事実が認められないとした第一審の無罪判決を維持した第二審判決全部に対し検察官が上告したが、憲法違反、法令違反のみを主張し、事実誤認の主張をしなかつた場合において、上告審が原判決および第一審判決を破棄し事件を第一審裁判所に差し戻す旨の主文の判決を言い渡したときは、その理由として検察官の憲法違反の諭旨が理由があると判示しただけであつても、右第一、二審判決はすべて破棄されたものであり、起訴された甲、乙の各行為はすべて、いまだ無罪とされたものでも、また刑事上の責任を問われたものでもない。
一、学生集会と憲法二三条の関係 二、併合罪の関係にある二個の公訴事実についてされた原判決につき上告審が主文においてこれを破棄差し戻す旨を示しその理由中において右公訴事実の一部にのみ関係のある破棄理由を示すにとどまる判決を言い渡した場合における右破棄判決の効果
憲法23条,憲法39条,刑訴法337条1号,刑訴法386条1項1号,刑訴法413条,刑訴法414条
判旨
憲法23条の学問の自由は、大学における研究・発表の自由を保障し、そのための大学の自治を認めるが、学生の集会が真に学問的な研究・発表ではなく、政治的・社会的活動に当たる場合には、同条の特段の保障は及ばない。
問題の所在(論点)
学生による学内集会が憲法23条の保障する「学問の自由」および「大学の自治」の範囲に含まれ、警察官の立ち入りが制限されるか。特に、政治的活動としての性格を有する集会の取扱いが問題となる。
規範
1. 憲法23条は、学問の自由を保障するとともに、その自由を確保するための手段として大学の自治を認める。2. 学生の集会についても、それが真に学問的な研究またはその結果の発表のためのものである場合には、大学の有する特別の自由と自治を享受し得る。3. しかし、学生の集会であっても、実社会の政治的・社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の有する特別の自由と自治は享有しない。
事件番号: 昭和31(あ)2973 / 裁判年月日: 昭和38年5月22日 / 結論: 破棄差戻
一 憲法第二三条の学問の自由は、学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含み、同条は、広くすべての国民に対してそれらの自由を保障するとともに、特に大学におけるそれらの自由および大学における教授の自由を保障することを趣旨としたものである。 二 学生の集会は、大学の許可したものであつても真に学問的な研究またはその結果…
重要事実
東京大学の公認学生団体である劇団が、大学の許可を得て学内施設で演劇発表会(本件集会)を開催した。その際、私服警察官が警備情報の収集を目的に立ち入っていたところ、学生らがこれを発見して警察官に暴行を加え、警察手帳を奪い取った。被告人らは公務執行妨害罪等で起訴されたが、本件集会が憲法23条の保障を受ける大学の自治の範囲内であり、警察官の立ち入りは違法であるとして、暴行等の違法性阻却が争われた。
あてはめ
1. 本件集会(演劇発表会)は、その内容・態様を検討すると、真に学問的な研究または発表を目的とするものではなく、実社会の政治的・社会的活動に当たる行為であった。2. また、当該集会は学生以外の立ち入りも予定された半公開的なものであった。3. したがって、本件集会は大学における学問の自由を享受し得る性格のものとは認められず、大学の自治に基づく特段の保障は及ばない。ゆえに、警察官の立ち入りの当否を検討するまでもなく、被告人らの行為について憲法23条違反を理由とする違法性阻却は認められない。
結論
本件集会は実社会の政治的・社会的活動に当たり、憲法23条の特段の保障を受けない。よって、原判決が被告人らの有罪を維持したことに憲法違反はない。
実務上の射程
大学の自治の主体が「教授等(研究者)」にあることを示唆しつつ、学生については学問・研究目的の場合に限り反射的に自治の保障が及ぶとする。答案上は、大学の自治の範囲を画定する際の「活動の性質(学問的か政治的か)」および「公開性の程度」を判断要素として用いる。ただし、本判決は警察官の立ち入り自体の適否には深く踏み込んでいない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和43(あ)15 / 裁判年月日: 昭和43年10月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合による団体行動であっても、暴力の行使を伴う行為については、憲法28条が保障する正当な団体行動の範囲を逸脱し、違法性が阻却されない。 第1 事案の概要:被告人両名を含む労働組合員らが、労働争議に関連する活動の過程において、暴力の行使を伴う所為(本件所為)に及んだ。被告人らは、かかる行為が憲法…
事件番号: 昭和38(あ)1208 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
いやしくも被告人が団体または多衆の威力を示して、刑法第二二二条の脅迫罪を犯した以上、たとえ、その団体または多衆が合法的な集団であつても、なお、暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条第一項の適用を免れない(昭和二四年(れ)第一六二二号同二八年六月一七日大法廷判決、刑集七巻六号一二八九頁参照)。
事件番号: 昭和46(あ)1876 / 裁判年月日: 昭和50年12月25日 / 結論: 破棄自判
大学の移転統合計画等に反対する学生が、(一)大学本部二階に新設された遮断扉につき多数学生の面前で説明することを事務局長に要求して拒否されると、同人を階下に連れ降ろそうとし、数人共同して、同人の腰かけている椅子次いでテーブルを倒し、その都度同人を床上にずり落とし、更に同人がベアリング付椅子に腰かけているのを椅子ごと二回に…
事件番号: 昭和51(あ)1557 / 裁判年月日: 昭和52年2月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による公訴の提起が思想・表現の自由を封殺する意図で行われたとは認められない場合、検察官の裁量権を著しく逸脱し公訴権を濫用したものとはいえない。 第1 事案の概要:被告人が「アイヌ問題」に関連する活動等を行い、これに関連して起訴された事案において、被告人側は、本件公訴の提起が被告人の思想・表現…