一 盗犯等の防止及び処分に関する法律第三条所定の常習累犯者は、憲法第一四条にいう社会的身分にあたらない。 二 盗犯等の防止及び処分に関する法律第三条は、憲法第三九条に違反しない。
一 盗犯等の防止及び処分に関する法律第三条所定の常習累犯者と憲法第一四条 二 盗犯等の防止及び処分に関する法律第三条と憲法第三九条
憲法14条,憲法39条,盗犯等の防止及び処分に関する法律3条
判旨
盗犯等防止法3条に規定される常習累犯者の重罰規定は、犯人の属性による刑法上の身分を対象とするものであって憲法14条に違反せず、また新しく犯した罪の法定刑を重くするに過ぎないため憲法39条にも違反しない。
問題の所在(論点)
1. 盗犯等防止法3条の常習累犯者規定が、憲法14条の「社会的身分」に基づく差別に該当し、法の下の平等に反するか。2. 同規定が、過去に刑罰を受けた事実を理由に加重処罰を行うことで、憲法39条が禁じる二重処罰に該当するか。
規範
1. 憲法14条の関係:『常習累犯者』という区分は、犯人の属性に基づく刑法上の身分であって、憲法14条が禁じる不合理な差別の根拠となる『社会的身分』には当たらない。2. 憲法39条の関係:再犯を理由とする刑の加重は、新しく犯した罪の法定刑を重くするものであり、前犯に対する確定判決を動かしたり、前犯に対して重ねて刑罰を科したりするものではない。
重要事実
被告人は盗犯等の防止及び処分に関する法律(盗犯等防止法)3条に基づき、常習累犯者として起訴された。弁護人は、同条が常習累犯者という属性を理由に重罰を科している点が憲法14条(法の下の平等)に違反し、また過去の処罰を理由に再度重罰を科す点が憲法39条(一事不再理・二重処罰の禁止)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 憲法14条について:本条が対象とする『常習累犯者』は、犯人の犯罪傾向や反社会的性格という個人的属性に着目した刑法上の概念である。これは本人の意思や行動によって形成された属性であり、門地や人種のように本人の意思で変えられない社会的地位(社会的身分)とは異なる。したがって、合理的な理由に基づく区別といえる。2. 憲法39条について:累犯加重は、前科があるにもかかわらず再度犯行に及んだという事実に示される新罪の強い非難可能性、および反社会的な性格の危険性を根拠に、新罪の法定刑を高めるものである。これは前罪そのものを再度処罰するものではなく、新罪の評価の問題であるため、二重処罰には当たらない。
結論
盗犯等防止法3条は憲法14条および39条のいずれにも違反しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
累犯加重規定や常習犯の処罰規定の合憲性を論ずる際の標準的な規範である。特に憲法39条との関係では、加重の対象が『新罪』の評価であることを明示することが重要となる。司法試験においては、刑罰制度の合理性を支える憲法判断の基礎として引用可能である。
事件番号: 平成9(あ)66 / 裁判年月日: 平成9年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】盗犯等の防止及び処分に関する法律(盗犯等防止法)3条の常習累犯窃盗罪は、窃盗等の習癖を有する者を重く処罰するために設けられた独自の犯罪類型であり、刑法上の累犯加重とは性質を異にするため、憲法39条の二重処罰禁止には違反しない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗の罪を犯したが、これまでに同種の犯罪によ…