酒酔い運転の行為当時に飲酒酩酊により心神耗弱の状態にあつたとしても、飲酒の際酒酔い運転の意思が認められる場合には、刑法第三九条第二項を適用して刑の減軽をすべきではない。
酒酔い運転につき刑法第三九条第二項の適用がないとされた事例
刑法39条2項,道路交通法117条の2第1号,道路交通法118条1項2号(昭和39年法律91号による改正前のもの)
判旨
酒酔い運転の行為時に飲酒酩酊により心神耗弱の状態にあったとしても、飲酒の際に酒酔い運転の意思が認められる場合には、刑法39条2項による刑の減軽をすべきではない。
問題の所在(論点)
飲酒により心神耗弱状態で酒酔い運転をした場合において、飲酒時にその意思があるとき、刑法39条2項を適用して刑を減軽すべきか。
規範
実行行為時に責任能力が減退していたとしても、原因行為(飲酒)の際に結果行為(酒酔い運転)を行う意思(原因において自由な行為の法理)が認められる場合には、刑法39条2項は適用されない。
重要事実
被告人は、酒酔い運転の実行行為時において、飲酒酩酊により心神耗弱の状態にあった。しかし、その原因となる飲酒の時点において、被告人には酒酔い運転を行う意思が認められた。
あてはめ
本件において、被告人は道路交通法違反の実行行為時には飲酒の影響で心神耗弱状態にあったといえる。しかし、被告人は飲酒を開始する際、あらかじめ酒酔い運転を行う意思を有していた。このように、自ら招いた責任能力の減退状態を利用して犯罪を実行したといえる場合には、非難の根拠が原因行為時に遡及するため、完全な責任を問うのが相当である。したがって、刑法39条2項による限定責任能力の規定は適用されないと評価される。
結論
刑法39条2項を適用して刑の減軽をすべきではない。
実務上の射程
「原因において自由な行為」の法理を、意思決定の連続性を根拠として認めた最初期の判例である。答案上は、構成要件的モデル(原因行為を実行行為とする説)ではなく、責任モデル(責任能力と実行行為の同時存在の原則を維持しつつ責任の遡及を認める説)を支える文脈で、故意ある原因において自由な行為の肯定例として引用する。
事件番号: 昭和43(あ)2640 / 裁判年月日: 昭和44年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の酒酔い運転罪の成立には、呼気中のアルコール保有量のみならず、被告人の身体的・精神的状況等を総合して正常な運転ができないおそれがある状態であることの認識が必要である。 第1 事案の概要:被告人がアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で車両を運転したとして、道路交通法…
事件番号: 昭和26(あ)2234 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
そして原審では心身喪失の主張がなされたけれども所論の心身耗弱の主張はなされていないから、喪失の点について判断を与えた以上耗弱の点について判示しないからといつて、原判決に判断遺脱の違法ありとはいえない。
事件番号: 昭和46(あ)637 / 裁判年月日: 昭和46年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】前科を量刑上の事情として参酌することは、憲法39条後段の二重の処罰の禁止に抵触しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件により起訴され、その裁判の量刑判断において、被告人に前科がある事実が参酌された。弁護人は、このように前科を量刑上参酌することは、既に処罰を受けた行為を実質的に再度処罰するもので…