船用品納入業者(A)が、法定の除外事由がないにもかかわらず、非居住者である外国船の船長その他の乗組員に対し、いわゆるBまたはC名義の下に、本邦通貨である日本円を支払つたときは、外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第二号前段、第七〇条第七号の罪が成立する。
外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第二号前段第七〇条第七号の罪が成立するとされた事例
外国為替及び外国貿易管理法27条1項2号前段,外国為替及び外国貿易管理法70条7号,外国為替管理令11条
判旨
船用品納入業者が、法定の除外事由がないにもかかわらず、非居住者である外国船の乗組員等に対し本邦通貨(円)を支払った場合、外国為替及び外国貿易管理法(外為法)違反の罪が成立する。
問題の所在(論点)
居住者である船用品納入業者が、非居住者である外国船乗組員等に対し、他人名義を用いて本邦通貨を支払った行為について、旧外為法27条1項2号および70条7号の罪が成立するか。
規範
外為法27条1項2号が禁止する「居住者による非居住者に対する支払」について、法定の除外事由(許可や正当な業務に伴う特例等)が存在しない限り、名義の如何を問わず本邦通貨を直接交付する行為は、同法違反の罪を構成する。
重要事実
船用品納入業者である被告人Aが、法定の除外事由が存在しない状況において、非居住者である外国船の船長その他の乗組員に対し、いわゆる「B」または「C」という他人の名義を借りる形で、本邦通貨である円を支払った。
事件番号: 昭和36(あ)2543 / 裁判年月日: 昭和37年12月18日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法第二七第二項第一号は、非居住者が同号記載の費用を支弁するため本邦通過で支払う場合を規定したものと解すべきである。
あてはめ
被告人は居住者、外国船乗組員は非居住者に該当するところ、両者間での円の支払は同法27条1項2号の「支払」にあたる。また、BまたはCという他人名義を用いたとしても、実質的に被告人が非居住者に対して支払を行っている事実に変わりはなく、法定の除外事由も認められない以上、構成要件に該当すると評価される。
結論
被告人の行為には、旧外為法27条1項2号および70条7号の罪が成立する。
実務上の射程
外為法の支払規制における「支払」の意義を確認する判例である。名義を偽装して潜脱を図ったとしても、実質的な支払主体と客体が規制対象であれば処罰を免れないことを示しており、経済犯罪における実質的解釈の重要性を示唆している。
事件番号: 昭和37(あ)906 / 裁判年月日: 昭和38年12月4日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法第二七条第二項第一号は、非居住者が同号記載の費用を支弁するため本邦通貨で支払う場合を規定したものと解すべきである(昭和三六年(あ)第二五四三号同三七年一二月一八日第三小法廷決定、刑集一六巻一二号一七〇六頁参照)。
事件番号: 昭和39(あ)2728 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 棄却
非居住者に対して、いわゆる「預り円」を支払うことは、外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第二号前段の規制の対象となる。
事件番号: 昭和36(あ)2939 / 裁判年月日: 昭和37年11月15日 / 結論: 棄却
一 約束手形は、外国為替及び外国貿易管理法第六条第一項第七号の支払手段に含まれる。 二 外国為替及び外国貿易管理法第二七条第二項第一号に規定する支払の主体には、非住居者に限られ、居住者を含まない。
事件番号: 昭和37(あ)624 / 裁判年月日: 昭和40年1月20日 / 結論: 棄却
外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第三号は憲法第二九条に違反しない。