公職選挙法(昭和三七年法律第一一二号による改正前のもの)第二二一条第三項の「選挙運動を総括主宰した者」とは、公職の候補者の選挙運動を推進する中心的存在として、これを掌握指揮する立場にあつた者をいい、右にいう選挙運動とは、当該公職の候補者が正式の立候補届出または推薦届出により候補者としての地位を有するにいたつてから以後に行なわれたものを指称すると解するのが相当である。
公職選挙法(昭和三七年法律第一一二号による改正前のもの)第二二一条第三項の「選挙運動を総括主宰した者」の意義と右にいう選挙運動の時期
公職選挙法(昭和37年法律112号による改正前のもの)221条3項,公職選挙法(昭和37年法律112号による改正前のもの)251条の2,刑訴法410条1項但書,刑訴法405条3号
判旨
公職選挙法221条3項にいう「選挙運動を総括主宰した者」とは、立候補届出後の選挙運動を推進し掌握指揮する立場にある者を指し、届出前の事前運動のみに関与した者は含まれない。また、届出後も総括主宰者となる者が届出前に行った行為については、同項の重罰規定を適用できない。
問題の所在(論点)
公職選挙法221条3項に規定される「選挙運動を総括主宰した者」の意義、および立候補届出前に行われたいわゆる事前運動の段階において、事実上の掌握指揮を行った者に対し同項の重罰規定を適用できるか。
規範
「選挙運動を総括主宰した者」とは、候補者の選挙運動を推進する中心的存在として、これを掌握指揮する立場にあった者をいう。その意義は、形式にとらわれず実情に即して実質的に理解されるべきであるが、刑罰および連座規定の適用の権衡を期する観点から、対象となる「選挙運動」は、正式な立候補届出(または推薦届出)により候補者としての地位を有するに至った後に行われたものを指し、それ以前の事前運動は包含されない。
重要事実
被告人Aは、参議院議員選挙の候補者Bの選挙運動を総括主宰した者と認定された。原審は、被告人Aが候補者Bの正式な立候補届出前に行った買収等の各行為について、公職選挙法221条1項1号だけでなく、同条3項(総括主宰者等に対する加重規定)を適用して処断したため、被告人側が同項の適用誤りを理由に上告した。
あてはめ
公職選挙法上の「候補者」や「出納責任者」が届出等の法律上の手続を要件としていることとの権衡上、総括主宰者の対象となる運動も届出後のものに限定されるべきである。本件において、被告人Aが候補者Bの立候補届出前に行った行為は、いまだ「選挙運動を総括主宰した者」による行為とはいえない。後に届出後の選挙運動を総括主宰した者となった場合であっても、届出前の行為について同項を適用することは法の解釈を誤るものである。したがって、届出前の犯罪事実に同項を適用した原判決には法令適用の誤りがある。
結論
立候補届出前に行われた行為については、公職選挙法221条3項を適用することはできない。ただし、本件では届出後の犯罪事実についても正当に刑が適用されており、処断刑の範囲に影響しないため、上告は棄却される。
実務上の射程
公職選挙法の罰則規定における「選挙運動」の範囲を立候補届出前後に分断して解釈する重要な指針である。特に総括主宰者の認定において、実質的な役割を重視しつつも、時間的範囲については「届出後」という形式的メルクマールを維持しており、罪刑法定主義的な限定解釈を示すものとして答案上活用できる。
事件番号: 昭和35(あ)2643 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: その他
一 公職選挙法第二二一条第一項第一号の供与申込罪は、同号所定の目的をもつて相手方に対し、金品等を供与する意思を表示し、該意思が相手方に到着することにより成立するものであつて、右供与の意思表示は明示たることを要せず、その意思あるものと認められる金品等提供の方法でこれをなすことを妨けず、又右意思表示の到達とは、相手方自信が…