同一簡易裁判所が、同一犯罪事実につき、日を異にして二重に略式命令の請求を受けたため、これに対応した日付の略式命令を二重に発したところ、右二個の略式命令が同時に確定した場合には非常上告の申立により、後日付の略式命令を破棄し、刑訴法第三三八条第三号により公訴を棄却すべきである。
原略式命令破棄、公訴棄却の言渡がなされた事例。
刑訴法338条3号,刑訴法458条1号
判旨
同一の犯罪事実について重ねて略式命令の請求がなされた場合、裁判所は後の請求について通常手続に移行させた上で、公訴棄却の判決を言い渡すべきである。
問題の所在(論点)
同一の犯罪事実について二重に公訴が提起(略式命令請求)され、これに基づき重ねて略式命令を発することの適否、およびその場合の裁判所の措置(刑事訴訟法338条3号の適用)。
規範
同一の被告人による同一の犯罪事実について既に公訴が提起されている場合、後の公訴については、刑事訴訟法463条1項に基づき通常の手続に移した上で、同法338条3号により公訴棄却の判決を言い渡さなければならない。
重要事実
被告人が道路交通法違反(追越し禁止場所での追越し)の事実につき、佐賀簡易裁判所に対して二度の略式命令請求を受けた事案。第一の請求(昭和39年9月28日付)に基づき略式命令が発せられ、その翌日に第二の請求(同年9月29日付)がなされた。裁判所は、後の請求に対しても即日、同一の犯罪事実について重ねて略式命令を発し、両命令は共に確定した。
事件番号: 昭和31(さ)5 / 裁判年月日: 昭和31年11月30日 / 結論: 破棄自判
さきに起訴略式命令のあつた犯罪事実と同一の犯罪事実につき、同一簡易裁判所に他の犯罪事実と共にさらに起訴略式命令の請求があつた場合に、その簡易裁判所が右二重起訴の部分について刑訴第三三八条第三号により公訴を棄却することなく、略式命令により他の犯罪事実と併合罪として処断し、さきの略式命令確定後右略式命令が確定したときは、後…
あてはめ
本件では、被告人の同一の犯罪事実について二度の略式命令請求がなされている。裁判所は、後の請求(9月29日付)を受けた際、既に前日の請求(9月28日付)に係る手続が進行中であった。この場合、裁判所は後の請求について略式命令を発するのではなく、刑事訴訟法463条1項により通常手続に移行させるべきであった。その上で、既に公訴が提起されている事件について重ねて公訴が提起されたものとして、刑事訴訟法338条3号(二重起訴)に基づき、公訴棄却の判決を言い渡すべきであったといえる。しかるに、裁判所がこの手続を怠り、重ねて略式命令を発したことは法令に違反する。
結論
本件略式命令を破棄し、刑事訴訟法338条3号を適用して公訴を棄却する。
実務上の射程
二重起訴の禁止(刑訴法338条3号)が略式手続においても厳格に適用されることを示した事例。略式命令請求が重複した場合、裁判所は後の事件を通常手続に付して形式裁判で終結させる義務を負う。非常上告の対象となる裁判の違法を判断する際の基礎的な枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和60(さ)1 / 裁判年月日: 昭和60年10月1日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について、重ねて略式命令が発せられた場合、その審判は法令に違反するため、刑訴法337条1号により免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、昭和58年2月21日の道路交通法違反(一時停止無視)の事実について、同年3月9日付の公訴提起に基づき略式命令を…
事件番号: 昭和41(さ)1 / 裁判年月日: 昭和41年4月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した裁判と同一の犯罪事実について、重ねて公訴が提起され、これに基づき略式命令が発せられた場合、当該後の裁判は刑事訴訟法337条1号に違反する。このような二重の確定裁判が生じた事態は、被告人の不利益が明らかであるため、非常上告の手続により原判決を破棄し、免訴を言い渡すべきである。 第1 事案…
事件番号: 昭和41(さ)2 / 裁判年月日: 昭和41年5月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について重ねて公訴が提起された場合、裁判所は刑訴法337条1号に基づき、判決で免訴を言い渡さなければならない。 第1 事案の概要:被告人は、昭和38年11月15日の無免許運転の事実について、同年12月5日に罰金6000円の略式命令が確定した。しかし、その後、検察…
事件番号: 昭和42(さ)3 / 裁判年月日: 昭和42年6月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】既に確定した略式命令と同一の公訴事実について重ねて公訴が提起された場合、確定判決があるときに該当し、刑訴法337条1号により免訴を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、無免許運転の事実により昭和41年8月4日に罰金1万円の略式命令を受け、同年9月17日に確定した。しかし、その後検察官は…