一、爆発物取締罰則第一条に「人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ」とあるのは、必ずしも、人の身体・財産を害することが爆発物使用の唯一、排他的な動機であることを要求したものではない。 二、犯罪の発生後直ちに現場に急行した警察官が、ひきつづき犯人を捜索のうえ、犯行後四、五十分を経過した頃、現場から約一、一〇〇メートルの場所で逮捕行為を開始したとき(原判文参照)は、刑訴法第二一二条第二項にいう「罪を行い終つてから間がないとき」にあたり、また、警察官が犯人と思われる者を懐中電灯で照らし、同人に向つて警笛を鳴らしたのに対し、相手方がこれによつて警察官と知つて逃走しようとしたときは、口頭で「たれか」と問わないまでも、同条項第四号にいう「誰何されて逃走しようとするとき」にあたる。
一、爆発物取締罰則第一条にいう「人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ」の意義 二、刑訴法第二一二条第二項第四号にいう「罪を行い終つてから間がないとき」および「誰何されて逃走しようとするとき」にあたるとされた事例
爆発物取締罰則1条,刑訴法212条2項4号
判旨
準現行犯逮捕の要件(刑訴法212条2項)に関し、「罪を行い終つてから間がない」か否かは当時の具体的状況を総合して判断すべきであり、相手方が警察官と認識して逃走した場合は口頭の問いがなくても「誰何されて逃走しようとするとき」に該当する。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法212条2項の準現行犯逮捕において、同条項にいう「罪を行い終つてから間がない」の判断枠組み、および同項4号の「誰何されて」に口頭での問いかけが必須であるか、その意義が問題となる。
規範
1. 刑事訴訟法212条2項にいう「罪を行い終つてから間がないとき」の判断にあたっては、逮捕当時の具体的状況を総合的に考慮して決すべきである。2. 同項4号の「誰何されて逃走しようとするとき」とは、必ずしも口頭で「たれか」と問うことを要せず、警察官が懐中電灯で照らし、警笛を鳴らすなどの挙動に対し、相手方が警察官であることを認識して逃走しようとした場合もこれに含まれる。
事件番号: 昭和53(あ)472 / 裁判年月日: 昭和53年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】爆発物取締罰則は憲法施行後も法律としての効力を有し、その第1条にいう「治安ヲ妨ケ」るという概念は憲法31条が要求する刑罰法規の明確性の原則に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、爆発物取締罰則違反等の罪で起訴された。これに対し被告人側は、同罰則が明治時代の太政官布告であり、適正な立法手続を経て…
重要事実
被告人らは、旧工廠の機械損壊や居宅への放火を目的として爆発物・火炎瓶を使用した。警察官が犯人と思われる被告人らを発見し、懐中電灯で照らした上で警笛を鳴らしたところ、被告人らはこれを警察官であると認識しながら逃走しようとしたため、準現行犯として逮捕された。弁護人は、口頭による誰何(呼びかけ)がなかったことや時間的接着性の欠如を理由に、逮捕の違法を主張した。
あてはめ
1. 「罪を行い終つてから間がない」か否かについて、裁判所は本件逮捕が行われた当時の具体的状況を精査し、時間的・場所的接着性が認められるとした。 2. 「誰何」の要件について、警察官が懐中電灯で照らし警笛を鳴らすという「犯人を特定し正体を明かす挙動」に出ており、これに対し被告人らにおいて「警察官であると認識」して逃走を図っている。このような状況下では、口頭による問いかけがなくても、実質的に誰何を受けて逃走したのと同視できる。したがって、準現行犯の要件を不当に拡張したものではない。
結論
本件逮捕は刑訴法212条2項の要件を充足し適法である。したがって、これに基づく原判決に憲法31条、33条違反の過誤はない。
実務上の射程
準現行犯逮捕における各号要件(本件では4号)と時間的接着性の判断について、形式的な文言解釈にとらわれず、現場の具体的状況や犯人の認識といった実態に即して判断する実務上の指針を示している。答案上では、犯行との時間的・場所的近接性に加え、追跡や発見の経緯から「罪と犯人の明白性」を基礎付ける事実を拾う際に、4号の誰何を広めに解釈する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1366 / 裁判年月日: 昭和27年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法212条2項に基づく準現行犯逮捕の適法性は、同項各号の事由に該当し、かつ、犯罪の直後であることが明白であるか否かによって判断される。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯罪を行った後、司法警察員によって逮捕された。第一審の証人(A、B、C)の供述によれば、逮捕に至るまでの経緯において、被告…
事件番号: 昭和28(あ)3616 / 裁判年月日: 昭和33年9月16日 / 結論: 棄却
いわゆる火焔瓶を乗用自動車に投げつけ、これに命中破壊させたが、右自動車の運転台座席覆布の一部を焼燬したにとどまり、火炎瓶の火が自動車に燃え移り独立燃焼の程度に達しないときは、刑法第一一〇条の放火罪は成立しない。
事件番号: 昭和41(あ)415 / 裁判年月日: 昭和42年2月23日 / 結論: 棄却
爆発物取締罰則第一条にいう爆発物の使用とは、一般的に治安を妨げ、または犯人以外の人の身体もしくは財産を害するおそれのある状況の下において、爆発物を爆発すべき状態に置けば足り、犯人の具体的目標とする人の身体もしくは財産を害する状況の下に置くことを要するものではない。