中華民国駐大阪総領事館邸の一階正面出入口上部中央に掲げられた、青天白日の同国国章を刻んだ横額の前面に、これとほぼ同形の、白地に黒く「台湾共和国大阪総領事館」と大書したベニヤ板製看板を、針金を用い、右横額上部の釘等に巻きつけ、これに重なり合うように密接して垂下させ、右国章を遮蔽する所為は、刑法第九二条にいう除去にあたる。」
刑法第九二条にいう外国国章の除去にあたるとされた事例。
刑法92条
判旨
刑法92条1項の外国国章損壊罪における「除去」とは、対象物の効用を滅却させる行為をいい、遮蔽によって効用を失わせることもこれに含まれる。
問題の所在(論点)
外国に対して侮辱を加える目的で外国の国章を「遮蔽」する行為が、刑法92条1項の「除去」に該当するか。
規範
刑法92条1項にいう「除去」とは、国章等の効用を滅却させることをいい、必ずしも対象物そのものを物理的に剥離・撤去することに限られない。
重要事実
被告人らは、掲揚されていた中華民国の国章(青天白日旗等と推認されるが判決文上は「中華民国国章」と表記)に対し、これを外部から見えないように遮蔽する行為に及んだ。
あてはめ
事件番号: 昭和31(あ)2696 / 裁判年月日: 昭和32年4月4日 / 結論: 棄却
一 労働争議中、労組組合員が、某会社の二階庇に掲げてあつた第二組合の木製看板を取り外し、これを同所から一四〇米離れた他家の板塀内に投げ棄てた場合および同会社の事務所土間に置いてある第二組合員家族より同組合員宛ての輸送小荷物に取りつけてあつた荷札を剥ぎ取り、これを持ち去つた場合には、いずれも刑法第二六一条の器物損壊罪が成…
被告人らが行った遮蔽の方法は、当該国章を外部から認識不能にするものであった。このような遮蔽行為は、国章が本来有する象徴的・表示的機能を果たせなくするものであり、その「効用を滅却させるもの」と評価できる。したがって、物理的な取り外しを伴わなくとも「除去」の要件を充足する。
結論
被告人らによる国章の遮蔽は刑法92条の「除去」に該当し、外国国章損壊罪が成立する。
実務上の射程
器物損壊罪における「損壊」と同様、物理的な損壊に限らず、その物の本来の効用を著しく害する行為(隠匿や遮蔽など)が本罪の実行行為に含まれることを示した判例である。答案上は、物の性質に応じた効用論の枠組みで論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和42(あ)1078 / 裁判年月日: 昭和43年1月18日 / 結論: 棄却
会社の労働組合執行委員長等の地位にある被告人らが、多数の労働組合員と共謀のうえ、会社当局に対するいわゆる闘争手段として、四つ切大の新聞紙等に要求事項を記載したビラを、会社本社の二階事務室に至る階段の壁、同事務室の壁、社長室の扉の外側、同室内部の壁に約五〇枚、同事務室の窓ガラス、入口引戸、書棚、社長室の窓ガラス、衝立に約…