普通乗用自動車を運転中、電話をかける用件が生じたのでそのエンジンを止めた上、その傍から離れ、七メートル離れた、店頭の赤電話のところに行き、まず電話帳をくつて先方の番号を調べ、次いで電話をかけようとしたときは、いわゆる「運転者がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態」にあつたものとして、道路交通法第二条第一八号後段に定める「駐車」にあたるものと解すべきである。
道路交通法第二条第一八号にいわゆる「駐車」にあたるとされた事例。
道路交通法2条18号,道路交通法45条2項,道路交通法120条1項5号
判旨
道路交通法上の「駐車」の定義における「運転者が車両を離れて直ちに運転することができない状態」とは、運転者が車両から離脱し、物理的・時間的に即時の運転再開が困難な客観的状況にあることを指す。本件のように、エンジンを停止して車両から数メートル離れ、電話をかける準備等の別行為に着手した場合はこれに該当する。
問題の所在(論点)
道路上に車両を停止させ、エンジンを切って7メートル離れた場所で電話をかけようとする行為が、道路交通法2条1項18号後段にいう「運転者がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態」(駐車)に該当するか。
規範
道路交通法2条1項18号後段(旧2条18号後段)にいう「駐車」の要件である「運転者がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態」とは、運転者が車両の付近を離れることにより、車両を直ちに移動させることが不可能な客観的状態に置かれることをいう。これは、エンジン停止の有無、車両からの距離、離脱の目的および態様を総合して判断される。
重要事実
被告人は、歩車道の区別のない道路において、電話をかける用件が生じたため、自己が運転していた普通乗用自動車のエンジンを停止させた。被告人は車両から離れ、約7メートル離れた場所にあるたばこ屋の公衆電話(赤電話)のところへ移動した。そこでまず電話帳をめくって相手方の電話番号を調べ、次いで電話をかけようとしていた。
あてはめ
被告人は、単に車両の傍らに立っていたのではなく、7メートルという一定の距離を隔てた場所まで移動している。また、移動先において電話帳を検索し、電話をかけるという車両の運転とは無関係な別個の用務に従事し始めている。このような状況下では、たとえ物理的距離が近接していても、心理的・時間的に車両の管理が放棄されており、交通の妨害等が生じた際に客観的に見て「直ちに運転を開始して車両を移動させること」が困難な状態にあるといえる。したがって、当該状況は同号の「駐車」にあたると解される。
結論
被告人の行為は、道路交通法2条1項18号後段の「駐車」に該当し、同法45条所定の駐車禁止違反(または原判決が認めた各条項)を構成する。原審の判断は相当である。
実務上の射程
本判決は、駐車の定義における「直ちに運転することができない状態」の具体的判断基準を示したものである。答案上は、車両からの距離だけでなく、離脱後の行為(電話、買い物、用足し等)によって運転への即時復帰が妨げられているかという観点から「駐車」と「停車」を区別する際のメルクマールとして活用すべきである。
事件番号: 昭和39(あ)1795 / 裁判年月日: 昭和40年10月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】歩道と車道の区別がある道路における「道路の左側端」とは、外観上歩道と車道を区画する工作物や電柱、標識等の配置から客観的に判断されるべきであり、その線に沿った駐車は道路交通法48条1項に適合する。 第1 事案の概要:被告人は、幅員約4.5メートルの舗装部分と約6メートルの非舗装部分(工作物なし)から…
事件番号: 昭和37(あ)3065 / 裁判年月日: 昭和38年6月17日 / 結論: 棄却
本件場所が、道路交通取締法(昭和二二年法律第一三〇号)第二条第二項の「一般交通の用に供するその他の場所」に該当するとした原判決の判断は相当である。 (原判決の判断の要旨)本件場所は、当時架橋工事中のa橋にさしかかる新設道路から分岐してその西方のb川の河原に至る間の約九三米の区間であるが、同所は数年前から砂利採取業者らが…