刑事訴訟法第二三五条第一項にいう「犯人を知つた」とは、犯人が誰であるかを知ることをいい、告訴権者において、犯人の住所氏名など詳細を知る必要はないけれども、少なくとも犯人の何人かたる特定し得る程度に認識することを要するものと解すべきである。
刑事訴訟法第二三五条第一項にいう「犯人を知つた」の意義。
刑訴法235条1項
判旨
刑事訴訟法235条1項の「犯人を知つた」とは、犯人の住所氏名等の詳細を知る必要はないが、少なくとも犯人が誰であるかを特定し得る程度に認識することを要する。
問題の所在(論点)
親告罪の告訴期間(刑事訴訟法235条1項)の起算点となる「犯人を知つた」とは、どの程度の認識を指すか。犯人の住所氏名等の詳細な特定が必要か。
規範
刑事訴訟法235条1項の「犯人を知つた」とは、告訴権者が犯人が誰であるかを特定し得る程度に認識することをいう。犯人の住所氏名などの詳細を具体的に知ることまでを必要とするものではない。
重要事実
親告罪に該当する各事実について、告訴がなされたが、その告訴が刑事訴訟法235条1項に規定される「犯人を知つた日から六箇月」の告訴期間内に行われたかどうかが争われた。具体的事実関係(いつ誰がどのように認識したか等)の詳細は判決文からは不明であるが、原審は告訴を適法有効と判断した。
あてはめ
告訴権者が犯人が何人であるかを特定し得る程度に認識していれば、告訴期間は進行を開始する。住所氏名等の詳細を知らなくとも、犯人を他の人間と区別して特定できる認識があれば足りる。本件各事実に関する告訴は、このような認識に至った時点から期間内に適法になされたと判断される。
結論
刑事訴訟法235条1項にいう「犯人を知つた」とは、犯人の詳細な属性を知る必要はなく、犯人を特定し得る程度の認識で足りる。したがって、本件の告訴はいずれも適法有効である。
実務上の射程
親告罪の告訴期間に関する基本判例であり、実務上、氏名不詳であっても犯人を特定できる程度の認識(例えば犯人の顔を見たり、特定の地位にある者と分かったりする場合)があれば期間が進行することを示す。論文試験では、告訴期間の遵守が問われる事案において、起算点を判断する際の規範として引用すべきである。
事件番号: 昭和26(あ)1656 / 裁判年月日: 昭和28年2月10日 / 結論: 棄却
刑訴規則第二一八条が判決書に起訴状記載の公訴事実等を引用することができると規定しても、刑訴第三三五条第一項を変更したものとはいえない。