公務員たる被告人がその職務に関し金員の貸与を受け賄賂を収受した場合、その金員の没収ができないときは、刑法第一九条第一項第三号、第二項、第一九条ノ二によつて、被告人からその金額を追徴することができる。
金員の貸与を受け賄賂を収受した場合とその金額の追徴。
刑法197条ノ5(昭和33年法律107号による改正前197条ノ4),刑法19条1項3号,刑法2項,刑法19条ノ2
判旨
公務員が職務に関し賄賂として金員の貸与を受けた場合、当該金員は刑法19条1項3号の「犯罪行為により得た物」に該当し、没収不能なときは追徴することができる。
問題の所在(論点)
賄賂として金員の貸与を受けた場合、その金員は刑法19条1項1号の「犯罪行為を組成した物」にあたるのか、あるいは同項3号の「犯罪行為により得た物」にあたるのか。また、これに基づき追徴することが可能か。
規範
公務員が賄賂として金員の貸与を受けた場合、その貸与を受けた金員自体は「犯罪行為を組成した物」(刑法19条1項1号)ではなく、「犯罪行為により得た物」(同項3号)に該当する。したがって、当該金員の没収ができないときは、刑法19条の2に基づき、被告人からその金額を追徴することができる。
重要事実
被告人は公務員としてその職務に関し、賄賂として現金1万5000円の貸与を受けた。原判決は、この金員を「犯罪行為を組成した物」として刑法19条1項1号・19条の2に基づき追徴を認めたため、被告人側が法令違反を理由に上告した。
あてはめ
本件で授受された1万5000円は、収賄罪の客体ではあるが、犯罪の成立に不可欠な要素として行為に組み込まれた物(組成した物)というよりは、賄賂として貸与を受けた結果として手元に残った利益(得た物)と評価すべきである。原判決が1号(組成した物)を適用した点には法令解釈の誤りがあるものの、3号(得た物)に該当することは明らかであり、いずれにせよ追徴が可能であるという結論において判決に影響を及ぼすものではない。
結論
本件金員は刑法19条1項3号の「犯罪行為により得た物」に該当するため、同法19条の2によりその金額を追徴することができる。
実務上の射程
賄賂が「金員の貸与(無利息等)」という形で行われた場合、その元本相当額の追徴の根拠条文を特定する際に用いる。没収・追徴の対象を1号(組成)ではなく3号(産出・取得)とした点は、実務上の条文適用の正確性を期する上で重要である。
事件番号: 昭和26(あ)190 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務員が授受した物品が、単なる儀礼の範囲を超えて職務に関連する謝礼と認められる場合には、収賄罪における「賄賂」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は公務員として勤務していた際、特定の物品を授受した。弁護人は、当該物品は職務に関する謝礼ではなく、純然たる儀礼の範囲を超えない贈答品であると主張して上…
事件番号: 昭和39(あ)1716 / 裁判年月日: 昭和40年10月19日 / 結論: 棄却
刑法第一九七条にいう公務員の職務とは、公務員がその地位にもとづいて取り扱うすべての執務をいい、独立の決裁権があることを必要としないものと解するのが相当である。