一 原審における代理人または弁護人および被告人の法定代理人または保佐人に該当しない被告人の父からの控訴申立は不適法である。 二 第一審裁判所は、控訴の申立が法令上の方式に違反していることを理由として右申立を棄却することはできない。
一 被告人の父からの控訴申立の適否。 二 控訴の申立が法令上の方式に違反する場合と第一審裁判所の措置。
刑訴法353条,刑訴法355条,刑訴法42条,刑訴法375条,刑訴法385条1項,刑訴規則235条
判旨
被告人の父からの控訴申立ては、法令上の方式に違反し不適法である。第一審裁判所が不適法な申立てに対し当事者へ注意を促す措置を講じなかったとしても、その不措置が違法となるものではなく、控訴裁判所を拘束することもない。
問題の所在(論点)
被告人の父による控訴申立ての適法性、および第一審裁判所が不適法な申立てに対し釈明や注意を促すべき義務を負うか、その不措置が控訴裁判所を拘束するかが問題となった。
規範
被告人のために上訴をすることができる者は、原審における代理人、弁護人(刑事訴訟法355条)、法定代理人、または保佐人(同353条)に限定される。これらに該当しない者による控訴申立ては、法令上の方式に違反する不適法なものとして棄却を免れない。
重要事実
被告人の父Aが、被告人のために控訴を申し立てた。第一審裁判所は、当該控訴申立てを受理したが、申立権限のない者による不適法なものであることを指摘したり、注意を促したりすることなく、訴訟記録を控訴裁判所へ送付した。控訴裁判所は、当該控訴を法令上の方式に違反するものとして棄却し、これに対して特別抗告がなされた。
事件番号: 昭和53(し)39 / 裁判年月日: 昭和53年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人に召喚状を送達することなく、弁護人のみに出頭を命じて開かれた公判期日において、証人尋問等の証拠調べを行うことは、被告人の出頭権を侵害するものであり、重大な手続違反として違憲・違法となる。 第1 事案の概要:被告人が勾留中または在宅のいずれであったかは判決文からは不明であるが、原審において被告…
あてはめ
刑事訴訟法上、上訴権者は限定列挙されており、父はこれに含まれない。また、第一審裁判所は控訴申立てが法令上の方式に違反していることを理由に申立てを棄却する権限を有さず(刑訴法375条参照)、速やかに訴訟記録等を送付する義務を負うにとどまる。したがって、第一審が誤りを発見して好意的に注意を促すことはあり得ても、法的義務としてそのような措置が強制されるものではなく、措置を講じなかったとしても何ら違法ではない。さらに、第一審の受理手続が控訴裁判所の判断を拘束することもないといえる。
結論
被告人の父による控訴申立ては不適法であり、第一審の対応に違法はないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
上訴権者の適格性および第一審裁判所の送付手続の性質に関する規範。第一審が形式的に受理し記録を送付したとしても、不適法な上訴が適法に転じることはないという点で、手続の厳格性を示す射程を有する。
事件番号: 昭和33(し)57 / 裁判年月日: 昭和33年8月28日 / 結論: 棄却
高等裁判所が抗告審としてした決定に対しては刑訴法第四二七条によつて再抗告ができないのであるから、同四二八条二項三項は適用の余地がない。
事件番号: 昭和45(し)51 / 裁判年月日: 昭和45年9月24日 / 結論: 棄却
原審弁護人でない弁護士名義の控訴申立書のみが控訴提起期間最終日に原裁判所へ差し出された場合、その控訴申立は無権限者のしたものとして不適法であり、その翌日同弁護士を弁護人に選任する旨の届出が追加提出されたとしても、これにより右不適法な控訴申立が適法有効となるものではない。
事件番号: 昭和28(し)67 / 裁判年月日: 昭和28年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意書の最終提出日直前に別罪で逮捕勾留されたために提出が遅れた場合であっても、刑訴法386条1項1号に基づく控訴棄却決定は、被告人の弁護権行使を不当に制限するものではなく、憲法13条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は控訴を提起したが、控訴趣意書の最終提出日の2日前に別罪により逮捕勾留…
事件番号: 昭和57(し)34 / 裁判年月日: 昭和57年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠調べ請求却下決定に対する異議申し立てを棄却する決定は、刑事訴訟法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」には該当せず、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:本件は、裁判所が行った証拠調べ請求の却下決定に対し、被告人側が異議を申し立てた事案である。原決定(…