日本駐留のアメリカ合衆国軍人である被告人が同国の軍法会議に関する統一法に基き同国空軍特別捜査官の面前において被疑者として取調を受けた際作成した供述書であつて、供述前当該被疑事実につきその意に反して供述をなす必要なく、且つ当該供述について宣誓をなすと否とは全く自由である趣旨の告知を受けながら任意に供述の上宣誓をしたものは何ら任意性に欠くるところなく、刑訴第三二二条第一項に則り証拠能力を有するものと解すべく、かかる宣誓が存するの一事によつては未だ証拠能力を有することを妨げるものではない。
米国空軍特別捜査官の面前における被疑者の供述書の証拠能力。
憲法31条,憲法38条,刑訴法319条,刑訴法322条
判旨
被告人らの供述が米国の軍法会議統一法に基づき、黙秘権の告知を受け、宣誓の有無も自由であるとの説明を受けた上で行われた場合、その供述書は任意性に欠けるところはなく、証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
米国の軍法会議統一法に基づき、宣誓を行った上で作成された被告人の供述書について、供述の強制にあたり任意性を欠くとして証拠能力(刑訴法319条1項、322条)が否定されるか。
規範
被告人の供述書が証拠として許容されるためには、憲法38条2項及び刑訴法319条1項の「任意にされたものでない疑い」がないことが必要である。外国の法手続に基づく供述であっても、供述者が自己の意に反して供述を強制されず、かつ供述内容について宣誓するか否かが自由である等の法的保障が確保されていれば、特段の事情がない限り、その供述は事実上も法律上も任意性を有すると解される。
重要事実
被告人Aらは、アメリカ合衆国の軍法会議に関する統一法に基づき供述書を作成した。同法によれば、被疑者は被疑事実について意に反して供述する必要がなく、かつ当該供述について宣誓を行うか否かは全く自由であった。被告人らは、供述前にこれらの趣旨の告知を受けた上で、自ら任意に供述を行い、その供述書に宣誓および署名を行った。
あてはめ
本件供述書は米国の軍法会議統一法に依拠しているが、同法は被疑者の黙秘権を保障し、宣誓の強制も禁じている。被告人らはこの権利の告知を適切に受けた上で、自らの意思で供述し、かつ宣誓・署名を行っている。このような手続的保障下でなされた供述は、虚偽を誘発するような不当な圧迫や強制が介在したものとは認められない。したがって、本件供述書は任意性に疑いがあるものとはいえず、刑訴法上の証拠能力を具備していると判断される。
結論
本件供述書は、手続の任意性が十分に担保されているため証拠能力が認められる。上告は棄却される。
実務上の射程
外国当局による取調べや、外国法に基づき作成された証拠の任意性を判断する際の指針となる。日本の国内法と異なる手続(宣誓等)が介在していても、実質的に黙秘権や供述の自由が保障され、不当な強制がなければ、任意性を認めることができる点に射程がある。
事件番号: 昭和26(れ)1162 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白の任意性に疑いがない場合において、当該自白が証拠として採用され、かつ、それが唯一の証拠でないときは、自白の証拠能力および証明力に関する憲法および刑訴法の規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の供述調書について、弁護人は任意性を欠くものであると主張して上告した。また、当該自白が唯一…