被告人甲(門司駅門司操車場下り運転室の運転係)が、下り旅客列車の通貨する前に第三信号機と線路との状況に注意する義務を怠つた過失と被告人乙(同駅甲て子取扱所の信号係)が右下り旅客列車が通過する前に下り貨物列車を通過せしめるために反位に開通した転てつ器を、通過後速かに正位に復さなければならない義務を怠つた過失とが一因をなして、右旅客列車を東小倉駅下り貨物二番線に停車中の右貨物列車の後部車輛に追突させ、その衝撃により人を傷害する事故が発生した以上、たとえ右事故が自動閉塞進行機の受け持つ機能区間外で発生したとしても、被告人らの右過失と事故との間に因果関係が存在する。
因果関係が存在すると認められる事例。
刑法211条,刑法129条
判旨
複数の者の過失が相競合して事故が発生した場合であっても、各人の過失と結果との間に因果関係が認められる限り、他の者の過失や補助者の関与の有無にかかわらず、各自が刑事責任を免れることはない。
問題の所在(論点)
刑法211条前段の業務上過失致死傷罪において、複数の者の過失が競合して事故が発生した場合や、補助者の過失が介在する場合に、被告人らの過失と結果との間の因果関係および刑事責任が否定されるか。
規範
業務上の過失が認められるためには、結果回避義務違反としての過失行為と発生した結果との間に相当因果関係が必要である。複数の行為者の過失が競合して一つの結果を発生させた場合、あるいは補助者等に過失が認められる場合であっても、当該行為者の過失が結果発生の直接の原因の一部をなしていると認められる限り、その因果関係は遮断されず、各自が刑事責任を負う。
重要事実
運転係である被告人Bおよび信号係である被告人Cは、高速度専用軌道列車の運行に際し、安全運行の職責を有していた。しかし、両名の過失が相競合し、下り準急505号旅客列車の追突事故が発生した。被告人側は、列車乗務員の信号誤認や、Bの補助者DおよびCに代わる信号士Eにも事故発生の一因があるとして、自らの刑事責任を否定した。
事件番号: 昭和32(あ)2377 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: 棄却
一個の道路交通取締法違反(居眠り運転)行為と二個の刑法第二一一条にあたる行為とがそれぞれ想像的競合犯の関係にある本件の場合には、刑法第五四条第一項前段第一〇条を適用し一罪としてその最も重い刑に従い処断すべきものである
あてはめ
本件において、被告人BおよびCは、地上勤務者として列車の安全運行を確保すべき職責を負っていた。被告人らの過失は、列車乗務員の信号誤認等とともに、本件追突事故の発生原因を構成している。Bの補助者DやCの代わりを務めたEに過失が認められる可能性があったとしても、それによってBおよびCの注意義務違反が事故の直接的な一因となった事実は揺るがない。したがって、被告人らの各過失と事故との間には因果関係が認められる。
結論
被告人らの過失と事故との間には因果関係が認められるため、他の者の過失の有無にかかわらず、被告人らは業務上過失致死傷罪の刑事責任を負う。
実務上の射程
過失の競合(共同正犯的構成ではなく、各自の過失と結果の因果関係)が問題となる事案での基本判例。他者の過失が介在しても、自己の過失が結果への寄与度を失わない限り責任を免れないことを示す。実務上、過失の相殺が認められない刑事責任の厳格性を論じる際に有用である。
事件番号: 昭和44(あ)752 / 裁判年月日: 昭和48年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による公訴提起の裁量(起訴独占主義・起訴便宜主義)は広く認められ、特定の事故関係者が起訴されず、他の関係者のみが起訴・処罰されたとしても、直ちに憲法14条(法の下の平等)や同31条(適正手続)に違反するものではない。また、過失犯の刑事責任は惹起された結果の重大性のみならず、当該事故の客観的状…