一個の道路交通取締法違反(居眠り運転)行為と二個の刑法第二一一条にあたる行為とがそれぞれ想像的競合犯の関係にある本件の場合には、刑法第五四条第一項前段第一〇条を適用し一罪としてその最も重い刑に従い処断すべきものである
一個の道路交通取締法違反(居眠り運転)行為と二個の刑法第二一一条にあたる行為とがそれぞれ想像的競合犯の関係にある場合とその擬律
刑法10条,刑法54条1項前段,刑法211条,道路交通取締法7条1項,道路交通取締法2項3号,道路交通取締法28条1号
判旨
業務上の注意義務を怠った無謀な運転により、第一の被害者に追突して傷害を負わせ、さらに第二の被害者に追突して死亡させた場合、業務上過失致死傷罪が成立する。被告人が期待可能性の欠如や心神喪失を主張しても、原審で主張されていない事実は上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
無謀運転により連続して死傷事故を起こした場合の刑事責任、および原審で主張していない責任阻却事由(期待可能性の欠如、心神喪失)を上告理由とすることの可否。
規範
業務上過失致死傷罪(刑法211条前段)の成否については、業務上の注意義務違反(過失)の有無、及び当該過失と死傷の結果との間の因果関係により判断される。また、責任能力(心神喪失等)や期待可能性の有無については、事案の具体的な状況に基づき検討されるべきであるが、上告審においては原審で主張・立証された範囲において判断の対象となる。
重要事実
被告人は自動車を運転中、業務上の注意義務を怠り、無謀な運転をした。その結果、まずAの自転車に追突して路上に転倒させ、傷害を負わせた(第一の事故)。被告人はさらに運転を継続し、次にBの自転車に追突してBを即死させた(第二の事故)。弁護人は、被告人が期待可能性のない状況または心神喪失状態にあったと主張して上告した。
あてはめ
判決によれば、被告人は「判示業務上の注意義務を怠り判示のごとき無謀運転を為し」たと認定されており、Aに対する傷害およびBに対する死亡の結果との間に因果関係が認められる。また、弁護人が主張する「期待可能性のない情況」や「心神喪失状態」については、原審においてこれらを内容とする主張がなされた事実は認められない。したがって、原審がこれらについて判断や手続を行わなかったことに違法はない。
結論
被告人に業務上過失致死傷罪が成立する。原審で主張されていない責任阻却事由の不在を理由とする上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、一連の無謀運転によって複数の死傷者を出した事案における業務上過失致死傷罪の成立を肯定したものである。実務上は、原審で主張しなかった事実関係(責任能力や期待可能性等)を上告審で新たに争うことは原則としてできないという刑事訴訟法上の制約を確認する際にも参照される。
事件番号: 昭和31(あ)1187 / 裁判年月日: 昭和33年9月8日 / 結論: 棄却
乗合自動車の運転者が、中学校の正門前附近道路を進行する場合には、前方ならびにその左右を警戒して校門出入者の有無に注意し、その出入者と衝突のおそれがあるときは何時でも停車することができる程度に速度を減少する等事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務がある。
事件番号: 昭和37(あ)2816 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
一 業務上過失致死傷罪にいわゆる業務につき、それが社会生活上の地位に基づきなされることを要しないとの原判示は相当でないが、原判決は被告人が自動車の運転を反覆断続して行なつていた事実を認定しているところ、右事実はとりもなおさず社会生活上の地位にほかならないから、結局原判決の右法令解釈の誤りは判決に影響を及ぼさない。 二 …
事件番号: 昭和33(あ)1462 / 裁判年月日: 昭和36年9月26日 / 結論: 棄却
被告人甲(門司駅門司操車場下り運転室の運転係)が、下り旅客列車の通貨する前に第三信号機と線路との状況に注意する義務を怠つた過失と被告人乙(同駅甲て子取扱所の信号係)が右下り旅客列車が通過する前に下り貨物列車を通過せしめるために反位に開通した転てつ器を、通過後速かに正位に復さなければならない義務を怠つた過失とが一因をなし…